カーボンニュートラルの実現に向けて注目される電気自動車(以下、EV)ですが、コスト面でガソリン車とどちらがお得なのかと迷う人は多いでしょう。車両の維持には購入価格だけでなく、長期的なコストも影響します。
結論から言うと、EVはガソリン車に比べると走行にかかる費用(充電料金)やメンテナンス費用が少ない傾向です。走行距離や使用年数によってはお得になる可能性もあります。
当記事ではEVとガソリン車、それぞれにかかる費用や、税制上の優遇、利便性を徹底的に比較し、それぞれの項目に分けて解説します。
車両の購入にかかるコストを比較
車を購入する際、車両価格は大きな判断材料となります。ここではEVとガソリン車の購入費用を比較しました。EVの購入にはCEV補助金(国からの補助金)や、お住まいの自治体から補助金が受けられます。
①軽自動車クラス
車種 | メーカー希望小売価格 | 補助金 |
日産 サクラ X | 259万9,300円~(税込) |
|
日産 ルークス S | 163万7,900円~(税込) |
– |
②普通車クラス
車種 | メーカー希望小売価格 | 補助金 |
日産 リーフ | 408万1,000円~(税込) |
|
MAZDA2(15SPORT) | 208万3,400円~(税込) | – |
- 結論
車両購入価格は、EVがガソリン車より高額です。
①軽自動車クラスでは100万円程度、②普通車クラスでは200万円程度の違いがありました。しかしEVは補助金が交付されるため、金額幅はもう少し抑えられる予想です。
EVの維持にかかる費用についてはこちら
電気自動車の維持費はどのぐらい?補助金からランニングコストまで徹底解説
走行にかかるコスト
EVとガソリン車の最大の違いは動力源です。ここではそれぞれの走行にかかる充電料金代とガソリン代の違いを解説します。
EV
電気を動力源とするEVの走行コストは充電料金です。EVの充電は、普通充電と急速充電に分けられます。
普通充電料金
EVを自宅で充電する場合の電気代は、ほとんどの場合月3,000円以内に収まります。
外出先での普通充電器は、自動車メーカーなどの充電カードやアプリに登録し、月額料金を支払ったうえで、1分につき1.54~4.95の充電料金を支払う方法が一般的です。
また、カードやアプリの登録なしでビジター利用ができる充電器もありますが、充電料金は割高になる傾向です。
他にも、月額料金のみで利用できるサービスもあります。普通充電はMyプラゴの定額プラン「プラゴ定額」の「普通充電し放題」なら、選択した1施設が月額980円で充電し放題になります。
急速充電料金
外出先の急速充電は、普通充電と同じように充電カードの月額料金を支払ったうえで分単位の料金を支払うことが一般的です。急速充電料金は普通充電よりも電力量が多いため、1分につき27.5~38.5円が相場となります。
急速充電にもカードやアプリの登録なしでビジター利用ができる充電器がありますが、料金は割高です。急速充電は「プラゴ定額」」の「急速充電バリュー」なら月額3,980円で300分たっぷり充電できます。(1施設、1回60分まで) 詳細はこちら
ガソリン車
ガソリンの価格は原油相場の高騰を受け、ここ数年値上がりしています。1リットル当たりの価格は以下の通りです。(2024年10月現在 参考:GoGo.gs)
レギュラー | 171円 |
ハイオク | 182円 |
レギュラーガソリンを燃料とするMAZDA2を例に挙げると、燃費は20.3km/Lです(WLTCモードの場合)。1ヶ月に1,000km走行した場合、ガソリン代は8,379円になります。
- 結論
充電代(月3,000円)よりもガソリン代(月8,379円)が5,379円高くなりました。充電料金はガソリン代より低価と言えます。
EVの充電料金についてはこちら
電気自動車の充電料金完全ガイド:自宅充電からスタンド利用まで徹底解説
充電/給油できるスポットの数
EVもガソリン車もそれぞれ充電や給油が不可欠です。いつでも手軽に燃料を補給できることは、車を維持するうえでのメリットと言えるでしょう。
ガソリン車が専用のスタンドで給油するのに対し、EVは商業施設やディーラー、SAやPAなどに設置された充電器を使用できます。
EV
商業施設など外出先に設置された充電器は、普通充電器が約2万2,000口、急速充電器が約1万100口となっています(2024年3月時点 参考:経済産業省)。
ガソリン車
全国のガソリンスタンドの数は約2万8,000店となっています。 (2022年3月時点 参考:資源エネルギー庁)
- 結論
ガソリンスタンドの数は毎年約3%のペースで緩やかに減少しています。ガソリンスタンドにEV充電器を併設する店舗も徐々に増えてきました。EV充電器は、経済産業省が2030年までに30万口設置することを整備目標として掲げています。今後はさらにEVの充電が便利になるでしょう。
自動車税
車を維持するうえで欠かせないのが自動車税です。4月1日時点のオーナーに毎年課税されます。
EV
EVの自動車税は一律2万5,000円です。排気量がないEVはすべて1,000cc以下とみなされます。さらにEVは、新規登録から13年まで約75%の減税が受けられるため、13年目までの自動車税は実質年間6,250円です。
ガソリン車
ガソリン車は排気量によって税額が異なりますが、MAZDA2 )の場合 3万500円です。(2019年10月以降に新規登録した車両の場合)
- 結論
車両を8年間使用した場合、ガソリン車で支払う自動車税の合計金額は(MAZDA2の場合)24万4,000円になります。対してEVは5万円です。自動車税はEVの方がガソリン車よりも19万4,000円お得となります。
自動車保険(任意保険)
自動車保険(任意保険)は、自賠責保険(強制保険)で補いきれない賠償に備えるための保険です。保険料は加入者の年齢や車の登録年月日、等級などによって異なります。
EV
EVの自動車保険は、保険会社によって「EV割引」が受けられます。割引率は契約内容によって異なりますが、年間保険料の1,000~1,500円、または3%程度です。
ガソリン車
例として、以下の条件で自動車保険に新規加入した場合、年間保険料は2万5,220円となります(車両保険なし)。
加入者年齢:31歳
運転者:30歳以上限定
車種:MAZDA2
その他特約:ゴールド免許
- 結論
「EV割引」が年間1,500円の割引が受けられた場合、8年間で保険料がガソリン車より1万2,000円抑えられます。
車検費用
車検はEVもガソリン車と同様に受ける必要があります。車検のタイミングも同じで、新車登録から3年後、以降2年ごとです。
車検費用は依頼先によって異なります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
電気自動車(EV)の車検はガソリン車と同じ?検査内容や費用の違いを解説
EV
EVでは車検時に支払う自動車重量税がエコカー減税の対象になります。新車登録から2回目の車検時まで、計5年間課税されません。
ガソリン車
例:MAZDA2(1,500cc)
車両重量:1.09トン=~1.5トンまで
1.5トン÷0.5トン=3
3×4,100円=12,300円(年間)。
2回目車検までの5年間にかかる自動車重量税は6万1,500円。
- 結論
ガソリン車(車両重量1トン~1.5トンの車の場合)は、2回目の車検までの5年間に自動車重量税が6万1,500円かかります。EVはエコカー減税で0円。差額は6万1,500円です。
EVの車検費用についてはこちら
電気自動車(EV)の車検はガソリン車と同じ?検査内容や費用の違いを解説
EVはランニングコストがお得
EVは車両購入費用こそ高額ですが、それ以外では税制上の優遇もあってコストを抑えられることがわかりました。ネックとなる車両購入費用も、補助金を活用することで大幅に下げられます。EVの購入を検討している人は、補助金が交付されているうちに購入がおすすめです。
まとめ
ガソリン車とEV8年間乗り続けた場合の差額を以下にまとめました。
※シミュレーションとなりお得になる金額は確実なものではございませんのでご注意ください。
- 走行にかかるコストの差額は8年間でEVの方が516,384円お得になる。
- 自動車税は車両を8年間使用した場合EVの方が194,000円お得になる。
- 自動車保険(任意保険)は「EV割引」(年間1,500円)が受けられた場合、8年間でEVの方が12,000円お得になる。
- 車検費用は2回目の車検までの5年間61,500円がお得になる。
ランニングコストはEVが約10万円/年お得に
上記から8年間でお得になる費用の合計は概算で約78万円の予測となりました。
EVはガソリン車に比べると車両が高額ですが、ランニングコストはお得と言えます。今後は充電ステーションなどEVを取り巻くインフラも充実し、ますます使いやすくなる傾向です。コストや環境への配慮、さまざまな面でメリットがあるEVをライフスタイルに合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。