CHAdeMO(チャデモ)は、電気自動車(以下、EV)の急速充電規格の1つで、日本で主流となっているほか、他のアジア圏でも採択されています。名前は「Charge de Move(動きを充電する)」「de: 電気」「充電中にお茶でも」に由来し、短時間で安全に充電できることが最大の特徴です。
当記事では、CHAdeMOの基本的な仕組みや、他の充電規格との違い、使用方法、そしてEVの充電以外の活用方法も解説します。これからEVを購入しようとしている方や、EVの充電について詳しく知りたい方に役立つ情報が満載です。CHAdeMOについて学び、より快適で効率的なEVライフを手に入れましょう。
CHAdeMOって何?
CHAdeMOは、EVやプラグインハイブリッド車(以下、PHEV)に対応した急速充電規格で、日本発の国際規格として普及しています。ここでは、CHAdeMOの特徴と仕組みをまとめました。
CHAdeMOの特徴
EVの充電方式は、急速充電と普通充電があります。急速充電に対応して日本ベースで開発された規格がCHAdeMOです。CHAdeMOは、リチウムイオン電池への負荷を軽減し、バッテリーの寿命を長く保てる設計が特徴です。
国内で流通するEVの多くがCHAdeMO規格を採用しています。独自の充電規格を採用しているテスラも、専用のアダプターをつければ、CHAdeMO規格の充電器を使用できます。
CHAdeMOの仕組み
CHAdeMOは、 最大400kWの直流電気を供給できます。CAN(Controller Area Network)を使用して通信を行い、EV内の充電情報を充電器へ提供できることが特徴です。
なお、CANとは、EVのさまざまな電子制御ユニットをつなぐためのネットワーク技術です。例えば、EVからバッテリーの残量や温度などの情報を充電器に送り、充電器は受け取った情報に基づいて、安全な電流や時間を決定します。
充電中に異常が発生した場合も、CANを通じて情報をやり取りし、適切な処置が行われるため安全です。
CHAdeMOの設置場所・使用方法
CHAdeMOは、商業施設やSA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)、カーディーラーなどに設置されている急速充電器の多くに採用されています。
CHAdeMO規格の急速充電器の使用方法の例は以下のとおりです。
1.EVやPHEVをP(パーキング)に切り替える。
2.EVやPHEVの電源をOFFにする(ONのままでは充電できない)。
3.CHAdeMOの充電器のコネクターをEVの充電口に差し込む。充電口とコネクターの溝を合わせ、突き当たるところまでまっすぐ差し込む。引いて、抜けないことを確認。
4.ロック解除レバーが上がって、コネクターがロックされる。
5.案内に従い、アプリや充電カードによるユーザー認証をして充電を開始する。正常に充電が開始するとブザーが鳴り、車載パネルの充電インジケーターの表示が変わる。
6.充電を終える時は終了ボタンを押す。
7.充電が完了したら決済する。
誰にもわかりやすく安全に使えることが、CHAdeMOのメリットといえるでしょう。
CHAdeMOの今後
移り変わりの激しい時代、EVのインフラ事情も例外ではありません。CHAdeMOが今後どのように進化していくのかをここで解説します。
国産EVの急速充電規格としてさらに技術を革新
CHAdeMOの急速充電器は、さまざまなメーカーが製造しています。このような状況下で、2024年にはメーカー間の互換性を確認する「CHAdeMOマッチングセンター」が三重県に開設されました。
CHAdeMOマッチングセンターでは、充電器やEVの種類によって充電できないといった不具合を未然に防ぐためのテストが行われています。これは、国内の円滑なEV普及を推進するための重要な一歩といえるでしょう。
中国と共同開発のChaoji(チャオジ)でさらにパワーアップ
EVの普及には、充電時間の短縮が不可欠といえます。この課題に対し、大いに期待されるのが充電器の出力向上です。
2021年の規格改定により、充電器の最大出力は900kWまで引き上げられました。日本と中国が共同で、CHAdeMOをベースに開発した超急速充電規格「Chaoji」も最大出力は規定上限の900kWです。これはCHAdeMOの数倍のスピードで、EVの充電時間を大幅に短縮するでしょう。
Chaojiはすでに中国で新しい充電規格として承認されており、実用化に向けた動きが進んでいます。日本でも、CHAdeMOとの互換性があるChaojiの導入が期待されています。
CHAdeMO以外の5つの急速充電規格
ここでは、CHAdeMO以外の5つの急速充電規格をご紹介します。
なお、充電規格については、以下の記事でも解説しています。
EV充電規格入門:CHAdeMOから最新規格まで、初心者にもわかりやすく解説
CCS1
CCS1(Combined Charging System1)は、主に北米で採用されている急速充電規格です。
CCS1は、1つのコネクターに普通充電と急速充電がまとめられています。これにより、充電器のコスト削減や、利便性の向上を目指しています。
CCS2
CCS2(Combined Charging System 2)は、CCS1とよく似ていますが、サイズや形状がわずかに異なります。CCS2は主に欧州で採用される急速充電規格で、ボルボやメルセデス・ベンツなどでも採用されています。
日本に輸入されるEVでは、CHAdeMO仕様に変更されていることがほとんどです。CCS2も、CCS1と同様に普通充電と急速充電が1つにまとめられています。
GB/T
GB/Tは中国の充電規格です。GB/Tは開発の初期段階で、日本のCHAdeMOから技術的な支援を受けました。そのため、充電口の形状やCANを通信に用いる点などがCHAdeMOの影響を受けたといわれています。GB/TはCHAdeMO規格をベースにして中国向けに改良した規格といえるでしょう。
GB/Tは、普通充電と急速充電どちらにも対応しており、普通充電で最大27.7kWの高出力を発揮します。
NACS
NACSは、テスラが独自に開発した急速充電方式です。最大250kWの高出力で充電できます。テスラのEVでは普通充電と急速充電の両方に対応する充電口が1つにまとめられており、車両側のコネクタもシンプルです。
また、 充電ケーブルを車両に接続するだけで、自動的に充電が開始される「プラグアンドチャージ」機能に対応しています。充電器の利用に必要なユーザー認証を手動でおこなう必要がなく、充電がスムーズです。
北米では、テスラだけでなく、GMやフォード、日系自動車メーカーの日産なども、2025年の新型EVから導入を開始するとされています。
Chaoji
Chaoji(チャオジ)は、CHAdeMOをベースに開発された、次世代の超高速EV充電規格です。中国で新しい充電規格として正式に承認され、今後は中国のEV充電インフラを大きく変革すると期待されています。
Chaojiの最大の特徴は、圧倒的な高出力といえます。出力範囲は50kWから最大900kWと広く、欧州の高性能急速充電器の最大出力である350kWの2倍以上です。しかし実用化には、バッテリーや充電ケーブルの耐性強化の必要があるという課題もあります。
CHAdeMOはEV充電以外でも活躍
CHAdeMOはEVの充電だけでなく、さまざまな場面で活躍しています。ここでは、EV充電器が充電以外で役立つ具体的な活用例をまとめました。
V2H(Vehicle to Home)
V2Hは、EVのバッテリーにためられた電気を家庭に供給できるシステムで、家庭からEVに充電することも可能です。このV2Hが標準で使えることが、CHAdeMOの大きな特徴といえるでしょう。V2Hは、日本だけでなくASEAN諸国や中東からも関心が集まっています。
V2Hに関しては、以下の記事でも解説しています。
V2Hと電気の自給自足|価格・設置費用を徹底解説!メリットやデメリットも
EPAC(Electrically Power Assisted Cycle)
EPACは、電動アシスト自転車のことです。日本発祥のこの技術は、今や欧州や北米など世界中に広がり、私たちの生活をより便利で快適にしています。
EPACの普及に伴い充電に関する課題も浮上してきましたが、CHAdeMOの充電器で解決への道が模索され始めました。家庭用のEPAC充電器はもちろん、EV充電のように不特定多数のユーザーが使用できるEPACの充電ステーションを設置するなど、世界中に共通して使える環境を目指しています。
まとめ
CHAdeMOは、国内でEVの急速充電をする際に欠かせない存在です。今後EVの普及が進むにつれてCHAdeMOも進化し続け、私たちのEVライフをより快適なものに変えていくでしょう。当記事がCHAdeMOの理解を深めるための参考になれば幸いです。