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牛の「おなら」と「げっぷ」を脱炭素 ―サステナブルな海藻サプリメント

FOOD | 2022.03.10

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牛の「おなら」と「げっぷ」を脱炭素 ―サステナブルな海藻サプリメント

牛から排出される温室効果ガス

乳製品や牛肉など、人間の食生活と深い関わりがある牛。
一方で、世界の温室効果ガス排出量の約4%が牛から排出されており、これは航空業界全体の2倍にも相当する。その要因となっているのは、牛の胃腸で発生するメタンガスが、おならやげっぷとして出されることだという。

この問題解決に立ち上がったのが、スウェーデンのスタートアップ企業Volta Greentech社。
なんと、牛から排出されるメタンガスの量を削減するために「海藻工場」を建設したのだ。

これまでにも当メディアで度々紹介している海藻だが、今度はメタンガスの排出量を削減するために使われるという。
「海藻」と「メタンガス」は一体どのような関係があるのだろうか。

メタンガスを抑制する海藻サプリメント「Volta Seafeed」

Volta Greentech社が開発したのは、牛から排出されるメタンガスを抑制できる「海藻サプリメント」。

「Volta Seafeed」と名付けられたこのサプリメントはカギケノリという海藻の一種から作られており、牛の餌に混ぜ1日100グラム与えるだけで、胃腸内で発生するメタンガスの排出を最大90%も削減できるそうだ。

海藻ベースの天然化合物で作られているため、安全性は証明されており牛に負担をかけることもないという。

「地球上には10億頭以上の牛がいて、牛から排出されるガスは増え続けています。しかし、再エネなどの分野では大きく技術が進歩している一方で、牛の脱炭素の取組みはまだあまり進んでいません。この事業には大きな意味があると思っています」と、共同創業者兼CEOのFredrik Akerman氏は言う。

微生物の働きを抑えることで、メタンガスを削減

その仕組みは意外にシンプルである。
牛の場合、第一胃(ルーメン)内の微生物が作用してメタンガスが発生すると考えられている。
Volta Seafeedはこの微生物の働きを自然に抑制し、結果としてメタンガスの発生も抑制できるという仕組みだ。

Volta Greentech社はスウェーデン最大の飼料会社であるLantmännen社と共同で、6年以上にわたり研究を続けている。
「メタンガス削減効果はほぼ証明されています。次は餌の消費量、乳量や成分に変化があるかなど、他のパラメータへの影響を調査したい。今のところ、結果は期待できそうです」と、Lantmännen社の製品開発者であるCecilia Lindahl氏は述べている。

サプリメントの製造工程も、サステナブル

世界に10億頭以上もいる牛のため、海藻サプリメントの生産規模拡大は重要課題である。
Volta Greentech社では、
水質や天候などの環境に影響されることなく、一定の生産量と品質を維持することが可能な海藻の養殖システムを開発。さらに工場は再エネや地元産業からの排熱を利用しており、牛にも人間にも優しいサステナブルなものとなっている。

牛のおならやげっぷの成分を変えることは、大規模な再生エネルギー発電所やEVの開発と比べると、圧倒的に地味に映るだろう。
しかしこの海藻サプリメントが世界中の牛に与えられれば、温室効果ガス排出量を大幅に削減でき、酪農や肉牛の飼育をよりサステナブルなものにすることができるはずだ。


Source :Seaweed to cow feed: Why is Sweden building the world’s largest algae factory?

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。