インドに行ったことのある人なら、町中を爆走する「オートリキシャ」と呼ばれる三輪車を見たことがあるだろう。
その語源は日本語の「人力車」。「人」が曳かずに「自動」で動くので「自動力車(オートリキシャ)」と名付けられた。なかなかウィットに富んだネーミングだが、最近は電動の「Eリキシャ」も増えつつあるという。
インドが目指す「2070年カーボンフリー」に向けて
インドは世界でも最も大気汚染が深刻な国の1つとして知られている。急速な経済発展、人口爆発など様々な要因がある中、インドが掲げている目標が「2070年までに実質カーボンフリー」だ。
その対策としては炭素排出権の購入も含めて様々な施策が検討されているが、政府が特に推進しているのが自動車、バイク、そしてオートリキシャの電動化だ。
しかし課題も多い。まず、稼働中の公共EV充電ステーションは全国でわずかに1,640基。その上、ほとんどが大都市に集中しているため国土の広いインドにおけるEV推進の大きな枷となっている。
そこで取り入れられた手法が、バッテリー交換式だ。
わずか5分で3時間走行可能に
Bloombergが伝えた動画を見ると、その仕組みは明快だ。
町中に設置された充電ステーションにある充電済みのバッテリーと、Eリキシャのバッテリーを交換するだけ。実にわかりやすく、簡潔で、そして実用性の高い仕組みとなっている。
加えて、かかる時間は5分、利用料はわずか50ルピー(約80円)で、現地のガソリン1リットルあたりの半額ほど。1回の交換で3時間は走れるということなので日に何度かは交換することになるのだろうが、それでもガソリンよりもずっと低コストで、もちろん排ガスもない。
インフラコストの小さいバッテリー交換式がEV普及の鍵になるか
以前にもPLUGO JOURNALでは台湾で広がりを見せているEバイクのバッテリー交換ステーションを紹介したことがある。
すでに成熟してしまった都市において、新たにEV充電ステーションを設置するのは意外と難しい。新たな敷地を空け、さらに大容量の送電線を引く必要があるからだ。
しかしバッテリー交換ステーションであれば既存インフラを利用して設置可能なため、インドのように広大な国土の中でインフラ普及が不十分な地域が残っている場合はもちろん、大都市でも設置がしやすい。これはEV普及に向けて大きな意味があるだろう。
インド政府は今後生産される予定の150万台にもおよぶオートリキシャをすべてバッテリー交換式のEリキシャに切り替え、さらにバッテリー交換ステーションの普及も狙っているという。
また、IT技術に優れたインドらしく、すでにステーションの製造ベンチャーだけでなく、オートリキシャをEVコンバートする企業も生まれている。
世界規模で取り組まなくてはならない環境問題。それぞれの土地、風土、そして文化にあった形を見つけていくことが大切だ。
SOURCE : Two-Minute Battery Changes Propel India’s Shift to E-Scooters