02
スローな旅は人との出会いを、出会いは新しい目的地を生む
村内で出会った村人はこう言った。
「むかしは交通の便が悪くて、お客さんは珍しかったんです。その頃の名残かな、お客さんには親切に接する文化がある気がします」
人との出会いが、予定外の目的地を生み出してくれる小菅村の旅。
村内の移動はE-BIKEで
ゆったりとした速度が旅を面白くする
ここ、NIPPONIA 小菅 源流の村では、宿泊客向けに無料でE-BIKE(電動自転車)を貸し出してくれる。実は、これが今回の旅の目的地を小菅村にした1つの大きな理由だった。
車では通り過ぎてしまう、徒歩ではたどり着けない、そんな場所がきっとあるだろうと期待しているのだ。
ではさっそく、行ってみよう。
見るようなモンは何もないけどよ、
わさび田でも見ていくといいよ
村内を自転車で走っていると、さっそく村人が話しかけてくれる。
「お、お客さんか。なにか見に行くのかい?」
実は道の駅に行って小腹でも満たそうと考えていた。が、そのことは言わずにお勧めを知りたいと聞いてみる。
「この村の名産だからわさび田でも見ておいでよ」
これこれ。待っていたのはこの「予定外の目的地」だ。わさび田の場所を聞いて、自転車で走り出す。
幽玄な森の中に現れる
鮮やかな緑のわさび田
棟梁さんに教えてもらったわさび田は、国道を外れて山道に入った先にある。シーズンがちょうど終わったばかりということで、畑の手入れをしていた男性に話を聞くことができた。
「小菅村は平地が少ないからね。こうして段々畑で上から川の水を流してんのさ」
そう言われ斜面の上へと目線を向けると、霧深い幽玄な森の中にはっきりと鮮やかな緑を見ることができた。
多摩川の源流、小菅川
わさび田の男性は、別れ際に「この村は水がいいんだ。ここから少し下ると養魚場もあるから見ておいで」と教えてくれた。
言われるままに山道を下り、自転車で数分。そこには村を東西に流れる清流・小菅川があった。決して大きな川ではないが、水量が豊かでごうごうと流れる音が耳に心地いい。川魚の養殖は、わさびに並ぶこの村の名物なのだそうだ。
源流の豊かな水が小菅村の食を支えている
川の近くには、たしかに養魚場がある。そこで出会った方の話によると、小菅村は日本で初めてヤマメの養殖に成功した村なのだそうだ。
東京湾に注ぐ多摩川の源流にあたる小菅川の豊かで美しい水が、さっきのわさびも、この川魚も、そしてもちろん他の農作物も育てている。この川こそが、小菅村の食を支えているのだ。
最後は「道の駅」で
地元食材を買い込んで
わさび田、養魚場と自転車で廻ってすっかり空腹だが、もう少し頑張って「道の駅 こすげ」へ。
そう、夕食のあとで地元食材を使った晩酌を作ってみるつもりだ。料理の腕には、ちょっと自信がある。
名物の川魚やわさびはもちろん、都内ではあまり見かけない「しまじろうナス」や万願寺とうがらし、そして名産の「ヒマラヤヒラタケ」を買い込んで、まずはいったん宿に戻ることにしよう。