PLUGO JOURNAL
plugo’s perspectives

PERSPECTIVES

クラシックカーを未来につなぐ、コンバートEVという選択

EV | 2021.10.24

SHARE

クラシックカーを未来につなぐ、コンバートEVという選択

目的を決めて、EVの魅力を100%引き出す

「最近のクルマのデザインはつまらない」。そんな声を耳にしたのは、一度や二度ではないだろう。けれど、街の中を走っているクルマに目を向ければ、ほとんどが最近の車種ばかり。結局、便利さ、快適さ、環境性能といった部分が優先され、昔ながらのクラッシックカーを選ぶのは、よほどのカーマニアだけ……。そんな寂しさを感じていた矢先、なんとクラシックカーをEVとして復活させている会社があるという情報が飛び込んできた。

はたして、ガソリン車からエンジンを取り除き、電気モーターを載せて走るコンバートEVの実力とは。これまで、数多くのクラシックカーをEV化してきた「OZ MOTORS(株式会社オズコーポレーション)」の古川社長にお話しを伺った。

OZモーターズの古川社長。アフターパーツメーカーとして合法改造を手掛けるなかで排ガス規制に対する知見を得たことによって、より社会に貢献できるクルマをという想いに至った。

ーコンバートEVとは、どのような車ですか?

古川氏 クルマが楽しかった″あの時代″を、電気自動車という最新技術で甦らせたいという想いから、「レトロフューチャー」をコンセプトに誕生したのが、弊社のコンバートEVです。製作作業としては、ガソリン車で使っているエンジンやガソリンタンクを取り外し、そこにモーターなどの電動機器やバッテリーを積んでいきます。また、重量の増加などにあわせて足回りを調整することもあります。なるべく古いクルマの良さを活かしていきたいので、できるだけインテリアはいじらない方向でやっています。もちろん、メーターまわりはすべて液晶パネルにしたい、エアコンを取り付けたいなど、オーナー様の希望があれば、いくらでもカスタマイズは可能です。

ーどれだけ古い車でもEVにできるのでしょうか?

古川氏 基本的にはできます。実は、古い車の方がEVにしやすいんです。つくりがシンプルということもあり、コンパクトカーは特にやりやすいですね。ただし、小さすぎる車だとバッテリー容量の制限はでてきます。これはコンバートEVに限らず、一般に市販されているものでも同じですが、EVである以上、どうしても航続距離の問題というのは考えなければいけません。

用途から逆算すると、一般的なクルマというのは、一日の利用が約50kmと、言われています。ですから、毎日の通勤や奥様が買い物に使うといった目的であれば、弊社がスタンダードで用意している実質航続距離が80kmのバッテリープランで充分かなと思います。積むバッテリーを増やすことで、実質の航続距離を160km、240kmと伸ばすこともできますが、当然、費用もかかる部分ですので、使用目的を明確にした上でお選びいただきたいですね。

注意していただきたいのは、メーカーのカタログに載っている航続距離と実質の航続距離は異なるという点。だいたい、カタログに400kmと記載されていれば実質的に走れるのは200kmなので、半分くらいの距離になると思ってもらえればいいと思います。

基本的にオーダーメイドのコンバートEVだが、完成品や費用感のイメージを知ってもらえるよう、VWビートルの完成品も販売中。お値段は約250万円〜。

クラシックカーに、走るよろこびを再び。

ー実際にEVになった愛車に乗った時のオーナー様の反応はどのようなものですか?

古川氏 弊社ではまず、できるだけ先に弊社のコンバートEVに乗ってもらう体験をしてもらうようにしています。皆さん、なんとなくEVのイメージはお持ちですが、実際に乗ったことがあるという人は、ほとんどいない。だから、とりあえず乗っていただいて、航続距離の話もお伝えした上で、それでもコンバートEVの付加価値が、距離の問題を上回ると思ってもらえた場合に発注をいただくようにしています。

実際に乗られてまず驚かれるのは、EVのトルクの大きさですね。弊社で扱っているビートルのコンバートEVでいうと、トルクは標準車の2倍程度あります。だから、単純にノーマル車よりも速いですし、ストレスもなく走れます。また、バッテリーを積むとガソリン車よりも重たくなるので、ちょっとどっしりしたような、高級車っぽい乗り心地になるのもEVの特徴。走る愉しみというのは、しっかり感じていただけると思います。あと、車内がとても静かなのもEVならではのメリットではないでしょうか。

足回りはそのままと言うことで、やや地面からの震動は感じる。カスタマイズも可能とのことだが、このままの方がクラシックカーに乗っている満足感が得られるように思う。

ー走行性能以外で、EV化するメリットというのはありますか?

古川氏 費用面で見れば、コンバートEVであっても、エコカー認定を受けられるというのはポイントですね。古いクルマに乗るとペナルティがあるのが日本の税制で、初年度登録から13年、18年を越えると自動車税と従量税が上がるわけですが、コンバートEVの場合は、初年度登録が何年であってもエコカーという枠に入るので、自動車税で言えば、1000ccのマーチやヴィッツと同じになります。7000ccのアメリカ車をコンバートEVに変えると、税金だけで年間10万円近く変わってきますよ。

車検に関しても、最初に改造申請をきちんと提出しますので、その後は普通のクルマと同じように受ければ問題ありません。 また、メンテナンス費用がグッと抑えられるというのも大きいです。クラシックカーに乗ったことがある人ならわかると思いますが、とにかく、エンジンひとつかけるのにもコツがいる。山道で突然動かなくなったら…なんて考えると、とてもじゃないけれど遠出はできません。

コンバートEVの場合、見た目はレトロでも、中身は最新の機器なので、そういった心配をせず、好きなクルマをコレクションではなく、″本当のクルマ″として使ってあげられる。それが、何よりの魅力だと思いますね。

実際に乗車して感じたのは、古いクルマ特有のガソリン鼻につく臭いがしないということ。直線でのスピードの伸びも想像以上。

クラシックカーの自動運転化も現実に!?

ー聞けば聞くほど魅力的なコンバートEVですが、今後はどのように進化していくのでしょうか?

古川氏 コンバートEVの大きな魅力は、パソコンと同じで常にアップデートできることにあります。今はまだ航続距離の縛りがありますが、乾電池がマンガン電池からアルカリ電池に変わったように、バッテリーの技術革新が起きれば走れる距離をグッと伸ばすことができる。そうなった時に、ミニ四駆のような感覚で、割と簡単にパーツを入れ替えられるのもEVならではの特徴と言えます。

また、実はコンバートEVの自動運転化というのも、すでに実現の一歩手前まできています。弊社の商品に、衝突防止や車線またぎをセンサーで感知して回避するモービルアイというものがあるのですが、これにAIを組み合わせることで、運転支援はできてしまう。アダプティブ・クルーズ・コントロールといって、前のクルマに追従して走る機能は、いま持っている技術でもすぐにできてしまうので、まずは第一弾としてこれを実現していこうと計画しています。

時代にあわせて求められる技術が変わってくる中で、現在はクルマがコモディティ化して、単なる移動手段になってしまっています。そういう状況を変えるために、EV化、自動運転化など、新しい技術をクラシックカーと融合させていくことによって、かつてのようにファッションツールとしてのクルマの愉しみ方を、未来につないでいければ良いなと思います。

古川治さん
〈コンバートEVに関するお問い合わせはこちら〉
株式会社オズコーポレーション
〒224-0042 神奈川県横浜市都筑区大熊町224-5
http://www.o-z.co.jp

SHARE

recommend

RECOMMEND