PLUGO JOURNAL

NEWS

海水を飲み水に変える「ソーラーパワー式天窓」

ENERGY | 2021.12.02

SHARE

海水を飲み水に変える「ソーラーパワー式天窓」

日本に住んでいると実感を持ちにくいかもないかもしれないが、世界には未だに「水不足」や「水の安全性」が問題となっている地域がたくさんある。「世界の3人に1人は、安全な飲み水を手に入れることができない」と、2019年にユニセフと世界保健機関が発表しているとおりだ。

そして現在、パンデミックの影響で状況は悪化していると考えられている。
これは今後日本にも起こりうることであり、我々日本人も決して目を背けられない。

しかし、そんな問題を解決できるかもしれない、サステナブルな設備が開発された。

「ソーラーパワー式天窓」だ。

一般的に「天窓」といえば屋根に設置される窓のことで、昼間は光が差し込んで部屋を明るくし、夜にはそこから星空を見ることができるものである。

今回開発された天窓はなんと、海水を飲料水に変えてくれるのだ。

日中は、海水がパイプを通って天窓に流れ込み、太陽の熱で海水を蒸発させ塩分や汚染物質を取り除く。そして、きれいになった飲料水が天窓底部の蛇口から抽出される、という仕組みになっている。

さらに夜には、飲料水から取り除かれて残った海水が「海水電池」として動作し、ライトの電源になるというのだ。

この「ソーラーパワー式天窓」は、建築学科の学生であるHenry Glogau氏が、デンマーク王立美術院(Royal Danish Academy)の修士課程の一環として、チリのシャンティタウン(貧困街)を訪れたことがきっかけで生まれたという。

「海水を飲料水に変え、さらに発電までする」という仕組みだけでも凄いが、特筆すべき点は他にもある。

Henry氏は、その設計ノウハウをチリの地元の人々に伝え、地元の材料(古いペットボトルなど)を使って自分たちで天窓を作ることができるようにしたのだ。

彼は、現地のNGO「Techo」から、チリでは毎日10の家族が住宅を買えずにシャンティタウンに移り住んでいることを知った。さらにチリではすべての公共事業が民営化されているため、水道料金がラテンアメリカで最も高い水準となっていることを知り、低所得者が無料で安全な水を利用できるように、天窓の作り方を教えたのだ。

「私はデザイナーとして、自分のスキルを向上させ、将来的に地球規模の課題にどう対処するかを考えたいと思っています。そして、私たちの環境の中で、どのようにして生態系に働きかけることができるかを考えています」と、Henry氏は述べている。


Source :This solar-powered skylight can turn seawater into drinking water

SHARE

TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

recommend

RECOMMEND