スマートウォッチ、スマートフォン、ワイヤレスイヤホン。
いつの間にやら、私たちは多くのハイテクデバイスを身にまとって生活するようになった。これから到来するといわれている「メタバース」の世界では、さらにいくつかのデバイスを追加することになるだろう。
となると問題になるのがバッテリーだ。サイズの小さいウェアラブルデバイスはバッテリー容量も小さく、どうしても頻繁な充電が必要となる。
人の動きで発電する「布」
解決方法は2つだ。
1つは、モバイルバッテリーを持ち歩くこと。これはすでに実践している人も多いだろう。
そしてもう1つが、自ら発電すること。これを実践している人は、おそらくほとんどいない。が、誰にでも「発電」が可能となりそうな技術が開発されている。
それが、シンガポールの南洋理工大学で開発された発電可能な布、その名も「ファブリック」だ。
「ファブリック」の主成分の1つは、PVDF-HFP(ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロピレン)。聞き慣れない素材だが、折り曲げや伸縮によって電荷を発生させることができるものだ。
これと太陽電池用に研究が進んでいる非鉛ペロブスカイト、耐水性と伸縮性を持った電気回路を組み合わせて作られている。
上に掲載した動画では、「ファブリック」を手で叩くと発電してLEDが光る様子も収録されているのでぜひご覧頂きたい。
まずはトレーニングウェアへの実装を
開発に携わった研究者によると、まずはトレーニングウェアへの応用を考えているという。確かに、トレーニング中は体を活発に動かすし、ミュージックプレイヤーなどのデバイスは欠かせない。
発電しながら運動する。この新しい習慣が生まれれば、充電の心配がなくなるだけでなく「自分自身がサステナブル電源」になるという稀有な体験をすることができるだろう。
今後はさらに、自動車(タイヤに埋め込むことができたら大きな電力を作れそうだ)などへの応用も考えられるこの技術。そもそも電気を「買う」のではなく「日常生活の中で作る」ことへも目を向けていきたい。