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幻想的で環境に優しい、バクテリア発光で照らされるフランスの町
ENERGY | 2022.05.17
生物が光を放つ「生物発光」
ここ日本では初夏の風物詩として人気のある蛍。
蛍の光はなんとも幻想的で、日々の疲れも吹き飛んでしまう気がするものだが、これは生物が体内の化学反応を利用して光を放つ「生物発光」と呼ばれる現象だ。
生物発光を行なう生物には「ホタルイカ」「ウミホタル」など「ホタル」の名がつけられることも多い。
珍しい能力に思えるかもしれないが、実は世界中には、発光する動物や植物、菌類が数多く存在しており、深海生物では実にその8割以上が光を放つことができるという。
仏のスタートアップGlowee社では、なんとこの生物発光を「照明器具」に活用するプロジェクトを進めている。
持続可能な「バクテリアの生物発光」が町を照らす
仏パリの南西約50キロにあるランブイエの町で、街路を優しく照らす青い光。
この円筒形のチューブには、海水と、フランス沖で採取されたaliivibrio fischeri(アリイビブリオ・フィシェリ)という海洋バクテリアが数十億個入っている。
Rambouillet, el pueblo francés con iluminación pública sin electricidad. ¿Cómo? Pues con bacterias luminiscentes que generan su propia luz. https://t.co/d6hc3wyC7a
— Pure Nature (@PureNatureEs) April 19, 2022
ここに少量の栄養分と空気(酸素)を送り込んで循環させることで、バクテリアの細胞内にある「ルシフェラーゼ」という酵素が光を生み出し優しい青色に光るという。
栄養分を作る際のエネルギーを除けば、ほとんどエネルギーを必要とせず自然の力だけで周囲を照らすことができるのだ。光を消したい時は、酸素の循環を止めるだけで良い。
この照明の製造工程で使用される水の量や二酸化炭素排出量はLED照明よりも少なく、海水と海洋バクテリアから作られた液体はもちろん生分解性だ。また、通常の街灯のように電力網に接続する必要もなく、消費電力の大幅な削減が可能だ。
「バクテリアの照明は、エネルギー効率の良い持続可能な方法です。私たちの目標は、街中の「光」の使い方を変えることです。住民、環境、生物多様性をより尊重するような雰囲気を作り、従来の街灯に代わる真の代替案として、この新しい「光」を広めたいのです」と、Glowee社の創設者Sandra Rey氏は言う。
未来の公共照明になり得るために
この「光」の最大の課題は、一般的なLED電球より光量が少ないこと。
Glowee社の生物発光照明は1㎡あたり15ルーメンの光量で、これは、EUで公園や広場の公共照明に最低限必要と定められている明るさの75%程度である。
その他にも、チューブ内のバクテリアの寿命や、液体の希釈の管理等様々な課題があり、プロジェクトはまだ始まったばかり。
ランブイエ市役所は、この町を “本格的な生物発光研究所 “にするために、10万ユーロの助成金を提供。また、EUからも170万ユーロの助成金を受け、同社は更なる技術開発に取り組んでいるという。
実用化までの道のりはまだまだ長いが、ヨーロッパ各国で40の都市照明のプロジェクトが進行中とのこと。動物や植物の生物発光を利用した、幻想的な照明が世界中で見られることを楽しみにしたい。
Source :French Town to Light its Streets With Bacteria Luminescence That Needs No Electricity