需要が高まる、代替たんぱく質
たんぱく質は健康維持に欠かせない栄養素だが、その生産過程においては大きな環境負荷がかかっていることをご存知だろうか。
一方、近年「持続可能な食」として注目され、需要が高まっているのが、代替肉(植物肉・培養肉)や昆虫食などの「代替たんぱく質」だ。
例えば1人あたりの牛肉消費量が世界最大級の国として知られるオーストラリアにおいても、この20年間でその消費量は徐々に減少。今では、健康的で持続可能、かつ倫理的に製造された「代替たんぱく質」を求める傾向が強いという。その最も大きな理由はコストで、次いで健康・環境・動物福祉に関する懸念などが挙げられる。
オーストラリアが描く「たんぱく質ロードマップ」
こうした中でCSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)は、多様な新製品や新原料への投資の指針となる「たんぱく質ロードマップ」を作成したという。
このロードマップは、あらゆる種類のたんぱく質について、消費者にはより多くの選択肢を、オーストラリアの生産者には新規参入の機会と更なる発展をもたらすための基礎を描くものだというが、その中でも今回は「代替たんぱく質」に焦点を当てよう。
Australia's Protein Roadmap will help Australia feed and nourish the world’s growing population, according to @CSIRO.
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— ANU Australian Studies Institute (@ANUausi) April 19, 2022
パンや肉、乳製品に加工される「植物性たんぱく質」
代替たんぱく質の中でも最も急速に拡大している市場は、豆類(大豆・ナッツ等)や穀類(全粒粉・小麦粉等)などに含まれる「植物性たんぱく質」だ。
様々な植物性たんぱく質を、パンやパスタ、肉や乳製品の代替食品に加工したものを「植物性食品(植物由来食品)」と呼ぶが、オーストラリア統計局のデータによると、植物性食品への需要は過去2年間で約30%増加しているという。
現在販売されている植物性食品のほとんどは輸入品か、輸入した原料を使ってオーストラリアで製造されているため、今後は同国の生産者がこの業界へ新規参入することが期待されている。
研究室で培養される「培養肉」
植物由来の肉とともに注目されるのが「培養肉」。
代替肉の一種だが、少量の動物細胞を体外で組織培養することによって作られた肉を培養肉という。生物学的には通常の肉と似ているが、動物の細胞を農場ではなく研究室で培養している点が大きな違いだ。
家畜の肥育と比べて地球環境への負荷が小さいことや、広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理が可能といった利点があるため、こちらも従来の食肉に代わる「持続可能な肉」 として期待を集めている。
Do you want to know what it's like walking through the Vowse? Here's a sneak peek 😉 pic.twitter.com/3bH3W4d4Nr
— Vow (@itsjustvow) May 24, 2021
豪Vow社では、豚肉・鶏肉・カンガルー・アルパカ・水牛の肉から培養肉を生産。市販はまだされていないが、一部のレストランではすでに使用されているという。
今後は、培養を最適化するための研究開発や安全性を考慮した基準設定なども求められていくだろう。
昆虫も重要なたんぱく源
近年日本でもコオロギの粉末を練り込んだお菓子が話題になったが、昆虫食も重要なたんぱく源のひとつと考えられている。
昆虫に含まれる栄養素は約60~70%がたんぱく質で、例えばコオロギのたんぱく質の栄養価は牛や豚、鶏などの他の食肉とほぼ同等とも言われている。また、脂肪酸を豊富に含むことから、栄養不足の子どものための栄養補助食品としても活用できるそうだ。
豪Circle Harvest社では、コオロギの粉末を練り込んだパスタやチョコブラウニーミックスなどの食用昆虫製品を販売しているという。
昆虫の養殖に使用する土地・水・エネルギーはいずれも少なく環境負荷が低いという利点もあり、家畜の飼料としての活用拡大も期待されている。
代替たんぱく質は、日本でも手軽に
従来より穀物・豆類・肉など、たんぱく質が豊富な食物の輸出量が多いことから、「高品質で付加価値の高い代替たんぱく質」の分野においてもグローバルリーダーを目指している、オーストラリア。
同国の「たんぱく質ロードマップ」は、持続可能性だけでなく、消費者の選択肢や生産者の新規参入の機会増加にも繋がるため、今後の動向が注目される。
ここ数年、日本でも植物性の肉や昆虫を使用した商品が徐々に増え、気軽に手にとれるようになってきた。まだ食べたことがない方は、これを機に一度「持続可能な食」を試してみてはいかがだろうか。
Source :Plant-based patties, lab-grown meat and insects: how the protein industry is innovating to meet demand, Australia’s Protein Roadmap PDF