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フォードのEVが4月26日発売
温室効果ガスの原因として、まず始めに「自動車」を思い浮かべる人が多いはずだ。そんな自動車業界に大きな影響を与えうるEVがアメリカ現地時間の4月26日に発売される。
アメリカでの発売が注目されているその車は、フォードの「F-150 ライトニング」。このEVの発売は、EV自体の性能によって環境に直接良い影響を与えるだけではなく、自動車業界全体のEV化に拍車をかける要因になるかもしれない。なぜそれほど大きなインパクトを与えるのか。その理由は、フォードがEV化を決めた車種にある。
アメリカでiPhoneに次ぐ販売台数を誇る人気シリーズ
今回発売されるF-150 ライトニングは、フォードの「Fシリーズ」の代表的な車種「F-150」をEV仕様にしたものだ。Fシリーズは、40年以上にわたりアメリカで最も売れているモデル。「ピックアップ」と呼ばれるカテゴリーで、開放式の荷台を有し、アメリカで人気の車種だ。
1990年代に新たに採択された奢侈税からピックアップやSUVが免除されたのも、ピックアップの人気が続いた要因だ。その後、自動車に対する奢侈税は廃止されたが、課税対象だったセダンは一般市民にとって手の届きにくい存在になった期間があったことで、その人気に陰りがでた。テスラの「Model 3」に代表されるようなセダンは、一般消費者向けのEVとして売られているものの、親しみやすいとは言い難い。
一方でピックアップであるFシリーズは年間400億ドル以上の収益を上げており、最も良い年で90万台を売り上げた。このモデルの販売台数を超えるアメリカ製品はアップル社のiPhoneだけだ。
さらに、F-150 ライトニングは価格の面で、先行のガソリン車よりも受け入れられやすいだろう。Atlas Public Policyによると、購入には連邦政府の補助金を受けることができ、基本価格は39,974ドルとなる。これは、エントリーレベルのF-150よりも17%安い価格だ。
人気のF-150のEVへの移行は、他のどの車がEV化するよりも、アメリカの地方都市にエコを呼びかけるはずだ。
発売前ながら自動車業界に与えた影響
フォードの現CEO、ジム・ファーレイ氏は2019年初めにF-150のEV化の構想を発表した。人気シリーズのEV化の報を受け、その後数ヶ月のうちにゼネラルモーターズ、テスラ、ステランティスといった競合各社が、EVの新車種を次々に発表。業界全体がフォードに追随した。
自動車の歴史に詳しい作家のダン・アルバート氏は「もしフォードがこれを成功させれば、EV市場全体を動かすことができる」と、展望を述べた。「これはアメリカにとって文化的に意義のある瞬間だ」。
構想の発表から2年後の2021年5月、ようやくフォードは「EVを採用するにあたってのテスト」として、F-150 ライトニングを発表。このタイミングで、発売は1年後、2022年の春であると明かされた。
F-150 ライトニングは発売前の車種だ。つまり、まだ1台も売れていない。しかし、すでに消費者とメーカーの双方にインパクトを与え、EVの普及を加速させたことは間違いない。
We took our best, and made it electric. The all-electric F-150 Lightning has arrived. #F150Lightning #BuiltFordProud pic.twitter.com/Hm3fvdcE7E
— Ford Motor Company (@Ford) May 20, 2021
自動車大国・アメリカのEV移行
国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年に米国で販売された自動車のうち、意外にもEVはたったの2%。EV普及率において、欧州や中国に大きく遅れをとっている。2020年の新車販売の75%がEV車となったEV先進国のノルウェーには遠く及ばない数字だ。
状況を改善すべく、フォードは2030年までに世界販売台数の40%をEVにすることを公約として掲げた。ゼネラルモーターズ、フォルクスワーゲン、トヨタも意欲的なベンチマークを設定している。
F-150 ライトニングの発売は、今後自動車大国アメリカのEV化を後押しするかもしれない。
Source :How Ford’s Electric F-150 Pickup Truck Will Cut Carbon Pollution, America’s Favorite Pickup Truck Goes Electric