健康被害、環境汚染にも関わるタバコの影響
古くは7世紀に古代マヤ文明の頃に始まり、現代まで何世紀にも渡り続いているタバコ文化。
日本の喫煙率はここ10年の間徐々に減少しているが、30~60歳代男性においては約3割が習慣的に喫煙しており、その数はまだまだ多い。
喫煙者本人はもちろんのこと、受動喫煙により周囲の人々の健康も害することはよく知られているが、実はこのタバコが栽培農家の人々の健康被害にも関係していること、森林破壊、土壌劣化、水質汚染など、さまざまな環境汚染にも関係していることはご存知だろうか。
この問題解決のため、タバコ生産国の1つであるケニアでは、ある革新的なプロジェクトが進行中だという。
ケニアで始まる、タバコ栽培から撤退するプロジェクト
それは、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)がケニア当局と協力して進めている「持続可能な農業プロジェクト」。
農家がタバコ栽培から撤退し、豆類など別の農作物の生産にスムーズに移行できるよう支援するもので、既に何百もの農家が参加しているという。
In Kenya, a trailblazing sustainable agriculture project has helped hundreds of farmers move away from the harmful practice of growing tobacco, in favour of a healthier alternative.
Learn more about this initiative supported by @FAO & @WHO 👉 https://t.co/zqZjH6ol0b#FoodSafety pic.twitter.com/dEas0lgWzn
— United Nations Geneva (@UNGeneva) March 24, 2022
タバコはケニアの主要産業の1つであり、ケニア経済の約1%を占めているが、一方で、農家の人々は長年の間さまざまな健康リスクに晒されてきた。
例えば、タバコの栽培には、農薬や肥料など大量の化学物質が使用されているが、これらは強い毒性を持ち、栽培に従事する人々の身体だけでなく、精神面にも悪影響を及ぼしているという。
また、濡れたタバコの葉を扱う際に皮膚から吸収されてしまうニコチン、タバコの粉塵の吸入による影響もある。
「私の胸は煙でいっぱいです。重いものは持てないし、長い距離を歩くこともできない」と、今ではタバコ栽培から撤退した農家の一人、Alice Achieng Obare氏は言う。
環境汚染にも関係しているタバコ
環境への悪影響もある。
例えば収穫したタバコの葉を乾燥させるために、年間約6,000万本もの木が伐採されて燃やされ、森林破壊や二酸化炭素排出量の増加に繋がっている。
また、タバコの栽培に使用される大量の化学物質、タバコの煙に含まれる多くの有害物質、廃棄される吸い殻…これらは全て環境に大きな影響を及ぼしているのだ。
そしてさらに、タバコを栽培することで土壌が酸化してしまうため、野菜などが育ちにくくなり、食糧不足も引き起こしているという。
タバコ栽培をやめることで健康状態が改善、就学率も向上
そこで代替作物として勧められているのが、豆。人間にとっては栄養たっぷり、特に子どもの発育や妊婦の健康にも良いと言われているし、土壌を肥沃にしてくれる野菜でもある。
このプロジェクトに参加した農家は、これまでに約135トンの豆を国連世界食糧計画(WFP)に販売し、タバコ栽培で得ていたよりも多くの収入を手に入れることができたそうだ。
また、有害なタバコ栽培をやめることで、農家の人々の健康状態も改善し、子どもたちの就学率も向上したという。
タバコ栽培からの撤退と代替作物への移行は、人にも環境にも優しい、まさに持続可能な農業プロジェクトなのだ。
「この取組みは、世界中に蔓延するタバコの悪影響を改善するための”move the needle(変化を起こすの意)”になるだろう」と、WHOケニア代表代理のJuliet Nabyonga氏は述べている。
Source :Seeds of change in Kenya as farmers lead way on tobacco-free farms