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犯罪の温床ゴミ山から子どもを守る、ラッパー兼社会起業家の取組み
SOCIAL | 2022.04.20
根強く残る、ケニアの社会問題
アフリカ大陸の東に位置する自然豊かな国、ケニア。
主要国を結ぶ高速鉄道が建設されるなど、近年大きな発展を遂げており、東アフリカ諸国の玄関口として外国企業も多く進出している。
一方、中心部から離れた地域では、教育や医療サービスが行き届いていない地域もまだ多く、「飢餓」「貧困」などの問題が根強く残っているのも事実。
首都ナイロビ郊外にあるダンドラのスラム街もこれらの問題を抱える街の一つだが、ここで育った1人のラッパー・Julius Owino氏の取組みについて紹介しよう。
ケニア人ラッパーJulius Owino氏
詩と音楽に興味を持ち、自分が何者なのか、何のために生きているのか、それを理解しようとしていたJulius Owino氏には、かつて2つの選択肢があったという。
犯罪にまみれた人生を歩むか、レベルアップしてより良い人間になるか。
彼は後者を選び、見事夢であったラッパーになったのだ。
「音楽をやればやるほど、自分の感情を理解し、自分の環境を観察し、そして世界を観察する方法が分かってきたんだ」
Kenyan rapper's words inspire community recycling https://t.co/SacFTETh0X
— Euronews Green (@euronewsgreen) April 7, 2022
そしてJulius氏は今、若者に力を与え、団結させることを強く望んでいるという。
その強い意志は、彼のファーストアルバムの曲の1つである「Kutabadilishwa na nani Kama si sisi」にも現れている。訳すと「Who will change things if it’s not us?(私たちでなければ誰が変えるのか)」。
彼のラップにはケニア語・英語・スワヒリ語が使われており、これは部族や階級によって分断されているこの国で、特に若者たちを団結させる一つの要因になっているという。
ゴミ捨て場以外選択肢のなかった地域に、場所と機会を提供する「DHC」
そんな彼が生まれ育ったダンドラのスラム街。かつては地域住民に住宅を提供するため世界銀行のプロジェクトが設立された場所だが、実現に至らず、人口密度の高いスラム街、そして世界最大規模のゴミ捨て場と化してしまったのだという。
そしてこのゴミ捨て場は、多くの貧しい子どもたちが毎日必死にお金になるゴミを探している一方で、犯罪組織が彼らを利用する場ともなっている。
そんな問題を解決するため、Julius氏は「DHC(ダンドラ・ヒップホップ・シティ)」を立ち上げた。
このプロジェクトは、地元の人に明るく創造的な空間を提供するもので、音楽スクールやコミュニティラジオ局、起業支援など、さまざまな援助を行っている。
誰かと関わりたい人、成長したい人など、誰でも参加することができ、ゴミ捨て場に行くこと以外に選択肢がほとんどなかったこの地域に、「場所」と「機会」を提供することで、大きく貢献しているのだ。
「ここでやりたいことがあれば、何でもできる。やりたいことがなければ、仲間を見つけることもできます」と、彼は言う。
ゴミを生活必需品と交換できる「タカ・バンク」
Julius氏のもう1つの取組みは「タカ・バンク」。
「タカ」は、ケニアの公用語の一つであるスワヒリ語で「ゴミ」を意味するが、彼は地域の至るところで「タカ」が放置されているのを見て、「タカ・バンク」を作ることにしたという。
「タカ・バンク」では、家庭から出る比較的きれいなゴミを持ってきた人に、アプリを通じてポイントを発行。地域の人は、そのポイントを使い生活必需品などを買うことができるという仕組みである。引き取ったきれいなゴミはリサイクル業者に引き渡すことで運営資金にしている。
彼は、今後より多くの人がアプリを利用し、簡単にゴミを生活必需品に変えることができる仕組みを検討しているという。
Julius氏は、ダンドラの人々のアイデアや夢、志を高めるツールやリソースを用意し、環境を整えたのだ。
「”思い”から”言葉”や”文章”へ、そして”実践的な行動”へと移行する力。それができる人はあまりいないでしょう」と、彼は言う。
彼のように大きくなくてもいい、どんなに小さなことからでも思いを言葉に、そして行動に移せる人が増えることで、未来は明るくなるのかもしれない。
Source :Kenyan rapper’s words inspire community recycling