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東京都の小池都知事が2030年を目処に「脱ガソリン車」を宣言するなど、日本でもガソリン車からEVへのリプレイスが進んでいくことは明確だ。
2030年まであと10年もないわけなので「次の車をEVに」と考えている読者も多いだろう。そこで今回は、EV購入の参考になりそうな記事をまとめて紹介する。
まずはEVの「仕組み」を理解
そのためにはまず、EVの仕組みを理解しなくてはいけないが、これは意外と単純で「モーター・バッテリー・タイヤ」を組み合わせただけのものだ。大きなラジコンカーと言っていい。
そして実は、自動車開発の黎明期にはEVのほうがむしろ一般的でもあった。それは先程説明したように意外なほど単純な仕組みが理由だ。(上図は1899年に世界で初めて時速100kmを達成した車で、EVだった)
しかし当時は電池の製造技術が未熟で、容量が小さすぎたり使い捨てだったりと実用的なレベルにはなかなか達しなかった。
そのため、技術的にはモーターよりもずっと高度だが燃料を継ぎ足すだけで使い続けられるガソリンエンジンを搭載した車が台頭、それが今日まで続いているのだ。
参考記事:「EVの市場規模は2050年に72兆ドルを超えると予測」
EVが「復権」した理由
このように、一時は自動車業界の主役だったEVがガソリン車に取って代わられ、そして今「復権」しつつあるのには2つの理由がある。
1つは、19世紀にEVが廃れていった原因の1つでもあった「蓄電池」の技術が発達したことだ。今のEVは一度のフル充電で400km以上走れるものも少なくない。
そしてもう1つは、電気制御ならではの「精細な操作性」とAIによる自動運転技術の相性がよかったことにある。
燃料の「気化(爆発)」という化学現象を動力源とせず、デジタル制御可能な電気信号によって出力を調整できるためAIによる車の自動制御が容易なのだ。
そのため世界各国で自動運転実現に向けた法整備が進んでいる。ここ日本でも「レベル4」と呼ばれる、特定環境下において完全自動運転を認可するための法改正案が閣議決定されたばかりだ。
これが実現すれば、高速道路などではドライバーが車を運転する必要がなくなる。映画を見てもいいし、同乗者とおしゃべりしていてもいい。眠っていたっていいのだ。
ファンドライブの楽しみが広がるのはもちろん、深夜高速バスや長距離トラックなどにとっては安全性と直結する技術革新となり得る。
参考記事:「日本でも『レベル4』の自動運転実現へ 法改正案を閣議決定」
豊富なバリエーション
ガソリン車とEVの最大の違いは繰り返しているように「エンジンの代わりにモーターを搭載している」ことだ。
巨大なガソリンエンジンが不要なため、ラゲッジスペースや居住空間を大きくとることが容易な上、空冷のためのフロントグリルすら不要となり、デザインに多様性が生まれている。
たとえば、未だ発売されずに世界中をやきもきさせているテスラのサイバートラックは、まさに「未来の車」といった外見だ。
このレトロフューチャーなデザインを可能にしたのが、まさに「エンジンもフロントグリルも不要」というEVの特徴で、これまで私達が自然と「車らしい外観」と感じていた要素を削ぎ落とした結果である。
このようなフラッグシップモデルだけでなく、たとえばエンジンスペースをラゲッジスペースに切り替えた商業車や、自動運転を前提としたラグジュアリーEVなども次々と発表されている。
The @Cadillac InnerSpace concept is a fully autonomous, super luxurious coupe for #CES2022 https://t.co/uk8X7f4tWH pic.twitter.com/e0Jj7ythyo
— CNET Cars (@CNETCars) January 5, 2022
参考記事:「PLUGO JOURNAL COMICS ― EVを見る目が変わるかも? 意外な一面」
さらなる選択肢 ―EVコンバート
もうしつこいと感じるかもしれないが、ガソリン車とEVの最大の違いは「ガソリンエンジンの代わりにモーターを搭載していること」である。
つまり、ガソリンエンジンをモーターに換装すれば、EVに変換(コンバート)することが可能ということでもある。
その技術はそのまま「EVコンバート」と呼ばれており、EVを所有する際の第二の選択肢として十分に検討可能だ。
上記の写真はBMC(British Motor Company)時代のクラシック・MINIをEVコンバートする公式プログラム「MINI Recharged」の参考画像だが、このように外観をほとんど変えることなく、中身だけを最新のEVにする技術が広がっている。
日本ではEVコンバートのエキスパートとしてOZ MOTORSが有名だ。2021年のグッドデザイン賞も受賞しているので、ご存じの方もいるかも知れない。
EVコンバートのメリットは、愛車の外観を変えずに済むことだけではなく、古い車に課される自動車税・重量税に対する「重課税」が不要になり維持費も抑えられるというコスト上のメリットも大きい。
参考記事:
「古い車をEVをに変身させる ―コンバートEVが2021年グッドデザイン賞を受賞」
「いまでもファンの心を掴み続ける『あの名車』をEVに」
「クラシックカーを未来につなぐ、コンバートEVという選択」
デメリットも知っておこう
最後に、EVのデメリットも抑えておくべきだろう。
まず思いつくのが「価格」ではないだろうか。ガソリン車と比較すると全体的にやや高値であることは否めない。
しかしこの問題は、普及とともに需給バランスが整えばある程度は解決していくだろう。
しかしもう一つ、無視できない問題がある。EVは「寒い」のだ。
それは(また繰り返すことになるが)EVがエンジンを搭載していないことに起因する。
ガソリンエンジンはつまり、中でガソリンが燃えている(爆発している)わけなのでもちろん温かい。エンジンに直接触ればやけどをしてしまうほどだ。
しかしモーターはそれほどの熱を持たない。これはエネルギー効率が良いことの証でもあるわけだが、一方で暖房に転用できる熱を発生させていないことを意味する。
そのため、寒い日には車内エアコンで暖房を利用することになるのだが、自宅用エアコンと同じく電力消費量が非常に大きい。JAFの実験によると、EVが大雪で立ち往生したときに暖房を使用していると、わずか2時間半で電力の大半を失ってしまうという。
対策は、電気毛布など省電力で暖の取れる手段を車内に用意しておくことしかない。
ただ一方で、EVの普及率が世界一のノルウェーが北欧の寒い国であることを考えると、充電インフラが十分に普及していればあまり問題にならないという見方もあるだろう。この点は、日本でEVを所有する際 ―特に寒い地方では考えておかないといけない問題だ。
参考記事:「JAFが実験『大雪によるEVの立ち往生には電気毛布を』」
バリエーション豊富なEVを正しく選ぼう
EVの歴史と特徴を抑えていくと、おのずと自分に適したEVの形が見えてくる。
寒さ対策としてPHEV(プラグインハイブリッド車)やHV(ハイブリッド車)も選択肢の中に入ってくるだろうし、今の愛車を手放したくないならEVコンバートもいいだろう。
少しでも参考になれば幸いだ。