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2023年「欧州グリーン首都賞」はエストニアのタリンに
2023年の「European Green Capital Award(欧州グリーン首都賞)」に、エストニアの首都タリンが選出された。
エストニアは、九州程の大きさの小さな国。
人口約43万人を抱える首都タリンは、世界遺産にも登録され歴史情緒溢れる街だが、Skype開発の地としても知られ、バルト海のシリコンバレーとも呼ばれるIT都市の顔も併せ持つ街である。
2010年に始まったEuropean Green Capital Awardは、環境改善と経済発展を両立させ、なおかつ人々の生活の質を向上させた地域の取組みを称え、さらに後押しすることを目的に欧州委員会が設けた賞だ。
毎年1都市が選ばれ、受賞都市は翌々年の1年間「Green Capital」を名乗ることができる。
2021年には「環境に優しい行動でケーキが無料になる取組み in フィンランド」で紹介したフィンランドのラハティ、2022年はフランスのグルノーブルが「Green Capital」を名乗っているが、今回は、タリンのどのような取組みが評価されたのだろうか。
Named the European Green Capital for 2023, this city is aiming to achieve carbon neutrality by the year 2050.
Can you guess where it is?
— Euronews Green (@euronewsgreen) January 7, 2022
街の総面積の19.5%をも占める緑地
同市は2050年までにカーボンニュートラルを達成するために数々の画期的な改革を実施しているが、中でも最も重要な取組みは「市民のために十分な緑地を提供すること」だという。
多くの都市や企業では二酸化炭素排出量削減のために様々な開発を行っているが、同市が行っている取組みはいたってシンプル。
公園などの緑地を「手付かずの状態にしておくこと」である。
その結果、同市の公園面積は、街の総面積の19.5%をも占めているという。(パリ市では9.5%、東京都ではわずか3.6%だ。)
緑の遊歩道で、生態系と市民の健康を維持
また、市内の複数地区を横断する13Kmもの緑の遊歩道を整備。
その目的は、市民が自動車の使用をやめ、より持続可能な方法(徒歩や自転車)を選択できるように呼び掛けることである。最近の研究では、ヨーロッパの都市部で適切な緑地を提供すれば、年間43,000人もの早期死亡を防ぐことが可能とも言われているそうだ。
さらに、公園や緑の遊歩道をより自然に近い形のままにすることで「ミツバチによる昆虫受粉を促進する」という意図もあるのだという。昆虫受粉は生態系の維持において非常に重要なものだが、農薬を使用するとミツバチが姿を消し昆虫受粉が行われにくくなってしまうそうだ。
同市の「十分な緑地を提供する」取組みは、環境にも市民の健康維持にも貢献しているのだ。
公共交通機関の無料化も
さらに、2013年以降は公共交通機関の無料化も行われているという。
同市は、自動車の利用を減らし大気汚染や騒音を抑制することで、二酸化炭素排出量を削減するとともに市民の生活環境を高めようとしている。
「私たちにとってGreen Capitalとは、タリンが魅力的で、快適で、クリーンな未来の都市であることを意味します。自然保護と人間の進歩が相反するものという時代は過ぎ去り、私たちは革新と発展を、持続可能な経済と環境配慮に結び付けることを学びました」と、タリン市長のMihhail Kõlvart氏は述べている。
環境対策への投資で生活の質が向上、長期的なメリットも
今では環境先進都市の同市だが、かつては、鉱物や製紙など、環境汚染が深刻な産業が数多くあったというのだから驚く。
これらの産業は、学問の発展や技術開発への重点的投資によって改善され、グリーンプロジェクトの拡大とともに市民の生活水準はますます向上しているという。
不動産デベロッパーEssential Living社の調査では、汚染率の低さ、生活費の安さ、犯罪件数の少なさにより、タリンの市民は世界で最も生活の質が高いと言えるそうだ。
「環境対策にさらに費用をかければ、この街はより住みやすい場所になるでしょう。環境に配慮し気候変動に左右されない街をつくることは、短期的には投資が必要ですが、環境に優しくより住みやすい街になるのであれば、価値のある投資ですし、長期的には経済的・財政的なメリットもあると思います」と、タリンの開発責任者であるKrista Kampus氏は述べている。
Source :Europe’s greenest city has free public transport and highways for bees