EVと自動運転の関係
EVは単に「サステナブル」というだけではない。ガソリン車のように燃料の気化(爆発)を動力源とはせず、電力によってモーター制御されているためコンピュータによって細かな操作が可能な点も大きな特徴だ。
石油ストーブとエアコン暖房の違いを考えると分かりやすいかもしれない。
どちらも結果は「部屋を暖める」ということで違わないが、石油ストーブは燃料を燃やしているため消火後も本体はしばらくは温かい。
一方、エアコンは電力による熱交換を行っているため、電力を切れば即座に温かい風は止まる。
さらにエアコンの場合、電力制御であるため繊細な動作が可能で、たとえば室温を0.5℃単位で調整したり、暖房と冷房を必要に応じて自動で切り替えて室温を一定に保つということも可能だったりする。
ガソリン車とEVの違いも似たようなもので、燃料よりも電力のほうが操作の繊細さという点では優れているため、自動運転車との相性がいいのだ。
「レベル4」からが、私たちが想像する「自動運転」
そういう事情もありEVの普及とともに広がりを見せているのが自動運転だが、制度上の「レベル」が設定されている。
今、私たちが一般的に体験できるのは「レベル1」か「レベル2」だ。レベル1の代表的な機能は自動ブレーキや高速道路上で先行車に追随するもので、ガソリン車にも搭載されているものが多い。
レベル2からはEVにしか搭載されていない機能が多くなる。たとえば高速道路で先行車を追い越したり、車線変更や合流を自動で行うものがこれに含まれる。私はこの機能をテスラで初めて体験し、とても驚いた(と、同時に少し怖かった)。
しかし、レベル2まではあくまでもドライバーが運転の主体であって、システムはその補助にすぎない。レベル3からは緊急回避などの場合を除いてシステムが運転し、レベル4で高速道路上などの特定条件下ではドライバーの介入が不要な完全自動運転となる。
日本で「レベル4」の自動運転が実現するとどうなる?
では、これが実生活にどのような影響を及ぼすだろうか。
すでにレベル4での自動運転が商業展開されているカリフォルニアの事例が参考になるだろう。
Rode in my first @Waymo while visiting @Tempegov and had a safe, efficient trip to @Target and back. This is the #Waymo. pic.twitter.com/3uRacM9Kg8
— Rick Glenn (@exocognosis) December 9, 2021
現地ではGoogle系のモビリティ企業「ウェイモ」が地域を限定した完全自動運転のタクシーを運用している。
日本では例えば、経営上の理由でタクシーやバスなどが行き渡っていない過疎地域においてドライバー不要の自動運転バスに応用されるだろう。また、深夜高速バスなどにおいてもレベル4の自動運転であれば高速道路上でドライバーが休息をとる(眠ることだって!)できるようになる。
経済や事業の持続可能性(サステナビリティ)の点でも、自動運転には価値があるのだ。
EVの「サステナビリティ」は自動運転が拓く
冒頭でも書いたように、化石燃料を消費することのないEVは環境負荷が小さいという点で地球規模でみた「サステナビリティ」に寄与する乗り物として注目されている。
しかし、こうして自動運転の可能性を探っていけば地域社会のサステナビリティ、経済のサステナビリティ、労働のサステナビリティとその意味は広がっていく。
人口減少が止まる見込みのない、この日本という国では自動運転の重要性が極めて高い。そういった未来への見通しも含めた法改正案が無事に議会を通過することを願っている。