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廃墟となった炭鉱がヨーロッパの再生可能エネルギー推進の追い風に

ENERGY | 2022.02.28

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廃墟となった炭鉱がヨーロッパの再生可能エネルギー推進の追い風に

廃墟と化した炭鉱

かつて、ここ日本にも1,000か所以上あったという「炭鉱」。
現在ではそのほとんどが役割を終え廃坑となっているが、暗い地下深くでの危険な重労働と環境汚染…… そんなネガティブなイメージを持つ人も少なくないのではないだろうか。

18世紀、イギリスを中心とした産業革命期には主要なエネルギー源であった石炭は石油への転換によりその役割をほぼ終え、さらに近年では再エネへの切り替えも進んで、炭鉱はもはや「過去の遺構」として廃墟と化していた。

ところが今、ヨーロッパでこの廃墟と化した炭鉱にサステナブルな価値が見出されているという。

廃坑に溜まった地下水が、再エネの源に

その秘密は、廃坑内に溜まった地下水。

廃坑道の一部は海抜0m以下にあるため、この数十年の間に溜まった水が地熱により温められ、場所によっては45℃にまで温まっていることもあるという。これを熱源として利用しようというのが、今回紹介する取り組みだ。

国内の約4分の1の家屋が廃坑の上に建てられ、今も何百万人もの人々が生活しているというイギリスにおいては、そのポテンシャルが非常に大きく、同国ではここに有益なグリーンエネルギー源があるとしてその活用を進めている。

地域の電力を賄う、廃坑内水熱

では具体的に、廃坑の温水をどう利用するのだろうか。

仕組みは意外なほど単純だ。まず新たにボーリング孔を掘削し、温水を汲み上げてヒートポンプや抽出器を通して圧縮、より高温にしてから暖房用ネットワークを通し周辺地域に供給されるのだという。
周辺地域の熱源として使用された温水は、再び鉱山に戻され地熱で温められるという仕組みだ。

この廃坑内水熱が持つ最大のメリットは、季節や天候に左右されず一年中使用できること。
化石燃料のように枯渇する心配もなく、長期間にわたり使用可能なエネルギー資源といえるだろう。

また、1980年代の炭鉱閉鎖で大打撃を受けた地域経済を活性化させるというメリットもあるという。

「廃坑の地下にある坑内水から熱を得ることは、低炭素で安定した熱供給を可能にし、炭坑の建物に住む人々に恩恵をもたらすことができるだろう」と、イギリス石炭庁で「熱と副産物イノベーション(heat and by-product innovation)」の責任者を務めるGareth Farr氏は述べている。

推定20億㎥もの炭坑水が持つ可能性

イギリスにおける炭坑水熱利用計画はまだ試行段階であるが、同国の坑道には、なんとネス湖の体積の4分の1以上に相当する、推定20億㎥もの温水が眠っているのだという。

かつて産業革命の中心地であったイギリス北東部では、この炭鉱水熱の実用化に向けた取組みがいくつも進められている。

例えばGatesheadでは2022年末に3MWの地熱水ネットワークを稼働させる予定で、炭坑水熱が都市全体の複数の住宅や企業に供給されるのは同国初だという。

Tynesideでも、1930年代から放置されていたHebburn炭鉱を地熱発電機に変えようとしており、2023年夏までに多くの市庁舎に電力供給される予定。さらに、その際使用するヒートポンプの電力は、主に近隣の屋根に設置されたソーラーパネルから得る予定だという。

「これは、炭鉱の遺産を、より環境に優しく持続可能な未来のための地中エネルギー資産に変える方法の一例です」と、Farr氏は述べている。


Source :Flooded and forgotten: How Europe’s disused coal mines could help heat our homes

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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