ガソリン車よりも歴史の古いEV
内燃機関を持ち、4つまたは3つの車輪で走行する乗り物 ―いま私たちが「自動車」と呼んでいるものが世の中に登場したのは、おおよそ120年前だった。
自動車の大衆普及を支えたのは、かの有名な「フォード・モデルT」というガソリン車だ。
歴史に名を残す名車として、今でも修理と改造を繰り返されて現役で走っているものもある。
しかし、実は発明された順番でいえばEVのほうが10年以上も先だったのはご存知だろうか。
自動車黎明期にはEVの研究が盛んで、かのトーマス・エジソンもEVを製作しているし、世界で初めて時速100キロを達成したのもEVだったという。(この記事の最上部に表示されている画像が、その車だ)
しかし、その後には先ほど紹介した「フォード・モデルT」を契機にガソリンエンジン車が世の中を席巻することになり、その歴史は今でも続いている。
EVの「復権」
そんなEVが、今では環境に配慮したよりサステナビリティの高い車として注目されているのはご存知の通りだが、その市場規模が30年後には72兆米ドルを超えるとインドの新興市場調査会社Asutute Analyticaは分析している。
これは2020年〜2021年の自動車主要9社(トヨタ、VW、ルノーグループ、ゼネラルモーターズ、現代、ステランティス、フォード、ホンダ、ダイムラー)の合計販売額を上回る規模だ。
もちろん、Asutute Analyticaの調査は充電インフラなどを含めた「市場全体」の予想なので単純な比較はできないが、大きな転換点に来ていると言えるだろう。
日本の調査会社 矢野経済研究所では2030年に世界の新車販売台数でEVが内燃機関車(ガソリン車・ディーゼル車)を超えるという予測も立てている。
まさにEVの「復権」時代が到来しようとしているのだ。
EV市場規模の拡大 カギは「新興国市場」
EV市場規模の拡大を支える大きなカギが、新興国市場だ。ガソリン供給網は完全でなくとも電気供給網は整備されている国は多く、そういった地域ではこれから「自動車といえばEV」という環境が当たり前に訪れるだろう。
また、今はまだ高価な印象のあるEVだが、技術的に成熟していけば製造コストはガソリン車よりも安くなると見る経済アナリストは多い。自動車各社が磨き上げてきたガソリンエンジンの特殊技術は不要で、「バッテリー・モーター・車輪」が揃えば作れるからだ。
いわば、大きなミニ四駆のようなもので、実際に新興のテック企業がEV開発に動いていることも、それを裏付けている。
EV普及の次は「サステナブルな発電」の普及
しかし、EVが普及すればサステナブルな社会が到来する、というほど話は単純ではない。
たしかにガソリン車と違い排気もなく、有限な石油資源を食い尽くすこともないが、EVを走らせている電気がどう作られているのか、という問題は残る。
いま世界では太陽光や海流によるサステナブルな発電所の開発が盛んだが、これらの建築コストは火力発電所のそれを大きく上回る。しかし、火力発電所は天然ガスや石油を燃やして発電するので、それで作られた電気で走るEVをが「本当にサステナブルな乗り物」なのか、という点については疑問が残ってしまう。
まず私たちにできることは、一人ひとりの家庭で再生可能エネルギー発電の電力を購入したり、太陽光発電に取り組んだりと言った草の根の活動しかないだろう。
いつか世界にEVが普及した時「やっぱりガソリン車の時代よりも世界がよくなった」と実感するためにも、今から取り組んでいくことが大切だ。
SOURCE Electric Vehicle Market – Industry Dynamics, Market Size, And Opportunity Forecast To 2050