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サステナブルに密猟を取り締まる、ソーラーパワー電動バイク

EV | 2022.02.03

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サステナブルに密猟を取り締まる、ソーラーパワー電動バイク

アフリカで、野生動物の違法密猟が問題となっていることをご存知だろうか。

日本では近年象牙の違法な取引が摘発される報道を耳にするようになったが、年間約2万頭ものゾウが密猟によって殺されていることと無関係ではない。ゾウに限らず、密猟によって多くの種が今絶滅の危機に晒されており、生態系の崩壊は人間にも少なからず影響を与えると考えられている。

そこで重要な役割を担っているのが、密猟者から動物を守る警備隊(レンジャー)。
密猟は道路もない広大な保護区で行われており、車でのパトロールは不可能なので、レンジャーの活動にはオフロードバイクが活用されてきた。

そんな中、スウェーデンのCAKE社が、南アフリカの自然保護トレーニング機関Southern African Wildlife College(SAWC)と共同で、レンジャーのための”新たな密猟防止バイク”を開発したのだという。

従来のバイクと一体何が異なるのだろうか。

 

従来使用されていたブッシュバイク(​​未開発の森林地帯や荒野用のバイク)は燃費が悪い上、アフリカの奥地まで飛行機やトラックでガソリンを運び込む必要があり、高コストで環境へのダメージも大きいことが問題視されていた。

また、ガソリンのエンジン音で動物が恐れ、密猟者にレンジャーが近づいてくるのを知らせてしまうことも懸念されていた。

「密猟者たちはレンジャーが到着する45分も前に、音を聞いて逃げてしまう。ブッシュバイクでは密猟者を逮捕することはほぼ不可能です」とCAKE社のCEO、Stefan Ytterborn氏は述べている。

そこで今回開発されたのが、ソーラーパワー電動バイク「Kalk AP」。
見た目はシンプルでスタイリッシュなオフロードバイクだが、高温多湿なアフリカの気候や荒野にも長期間耐え得る仕様になっている。そして特筆すべき点は、太陽光発電によって駆動することと、ほぼ無音で走行できるということである。

移動式充電ステーションにソーラーパネルが取り付けられているため、アフリカの豊富な太陽光で充電が可能。1つのバッテリーは常に充電ステーションに置き、もう1つのバッテリーを自転車に装着することで、高価なガソリンを使用せずオフグリッドで稼働することができるのだ。
そしてエンジンの排気音もないため、レンジャーは密かにパトロールを行うことができる。

環境を汚染することなく、コストの削減もできる。つまり、サステナブルで効率的な密猟取り締まりが可能となったのだ。

実際、この「Kalk AP」が導入されてから数ヶ月後には、密猟対策にかかるランニングコストを削減することができ、レンジャーの増員や給与アップ、パトロールの強化に充てることができるようになったという。
今はまだ始まったばかりのプロジェクトだが、今後ますます多くの「Kalk AP」が導入されていくことになるだろう。

さらにこのプロジェクトにはもう1つ興味深い点がある。

実は、レンジャーの目的は密猟者を警察に引き渡すことではないということだ。レンジャーは密猟を阻止する代わりに、彼らにお金を渡すのだという。そうすれば、彼らは狩りをしないで食糧を買うことができるというのだ。ここには、アフリカの深刻な食糧不足の問題があり、簡単に解決することが難しい様々な要因が絡んでいる。

「密猟は象牙や代替医療品の原料など、違法な利益を得るために行われているものだと考えていました。しかし現実は、食糧難に苦しむ地元の人々にとって、より人道的な問題だったのです」とYtterborn氏は述べている。

サステナブルなバイクで密猟を取り締まることは、この深刻な食糧不足問題解決への最初の一歩を踏み出したと言えるかもしれないが、より持続可能な方法で解決していくことが求められている。


Source :Solar-powered bikers are busting illegal wildlife poachers in South Africa

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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