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大量の物資や人を高速で遠距離輸送するために航空機は欠かせない手段であるが、ジェット燃料の環境負荷は航空業界において大きな課題となっている。
以前の記事マスタードで空を飛ぶ!?新たな航空燃料の可能性ではマスタードが燃料となる可能性があることを紹介したが、そのフライトの実現にはもう少し時間を要するだろう。
しかし近年、航空機の脱炭素化に向けた取組みが積極的に進められている。
ユナイテッド航空が、現地時間2021年12月1日に、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を100%使用して旅客便を運航したことを発表したのだ。
これは、持続可能な航空燃料のみを使用した商用飛行として、世界初の取組みである。
Good news for the environment! The first passenger flight ever to be powered by 100% plant-based jet fuel flew from Chicago O’Hare to D.C. Reagan National this month! https://t.co/RhSWmgtO1I#biofuel #RenewableFuel
— SIT Study Abroad (@SITStudyAbroad) December 11, 2021
このフライトは、Boeing社、CFM International社、Virent社、World Energy社とのパートナーシップにより実現。
Chicago O’Hare空港からWashington, D.C. Reagan National空港行で、100名以上の乗客とユナイテッド航空のCEOが搭乗した。
今回使用されたSAFはVirent社が開発したもので、トウモロコシの穂軸や茎などの農業廃棄物を原料とする100%植物由来の燃料である。
現在の法律では、航空機におけるSAFの使用は最大50%に定められているため、通常は、従来の石油系ジェット燃料にSAFを10~50%混ぜて使うケースが多い。
今回のフライトでは1つのエンジンに100%SAFを使用し、もう1つのエンジンには従来のジェット燃料を使用したという。
2つのエンジンをそれぞれSAFとジェット燃料とで満たしたため、合計するとSAF50%だが、SAFのみで満タンにしたエンジン1基は100%SAFで稼働。SAFのみでもエンジンを問題なく動かせることを示したのだ。
このフライトの成功は、両エンジンに100%SAFを使用することへ大きな一歩を踏み出したと言えるだろう。
「合成香料灯油(synthetic aromatic kerosene)」と呼ばれるVirent社のSAF燃料は、特許取得技術によって植物の糖分を油に変え、飛行中に燃焼させたときの温室効果ガスの排出量を約50%削減することができるという。ライフサイクルベースでは最大80%削減することが可能だそうだ。
同社によると、この燃料は沸点、熱安定性、凍結点などが石油系ジェット燃料と似ているため、性能指標も化石燃料の場合と変わらなかったという。このため、空港システムのインフラを変更することなく利用できるのも大きな利点だと言えるだろう。
「本日のSAFによるフライトは、航空業界における脱炭素の取組みにとって重要な節目となるだけではない。私たちはひとつの企業が単独でできることには限界があると分かっている。大きな課題に取組むには、様々な企業が一体となって協力することが重要であることを示したのだ」と、ユナイテッド航空のCEO Scott Kirby氏は述べている。
ユナイテッド航空は航空業界の脱炭素化のリーダーとして、2050年までにカーボンニュートラルの達成を目標としている。
サステナブルに空の旅を楽しめる時代が、すぐそこまできているのかもしれない。
Source :Jet Flown by United Airlines Entirely Powered by 100% Plant-Based Fuel from Corn Stalk Waste