PERSPECTIVES
出発点は「この街の景色って、本当に合ってるのかな」という問い
PLUGO JOURNALのNEWSで伝えてきているとおり、いま世界は内燃機関を搭載した、いわゆる「ガソリン車」から「EV」への急速なシフトの中にある。その波はもちろん、日本にも訪れている。
モビリティという社会インフラが変わるとき、街の景色も必ず変わるだろう。そう、「電気」というインフラが社会を覆いつくしたのと同時にあらゆる風景に電線が忍び込んだのと同じように。
しかし、私たちはその未来を考えた時、ある素朴な疑問に突き当たった。「今の街の景色って、本当に合っているのかな?」
その問いからスタートしたPLUGO DESIGN CENTERについて、株式会社プラゴのCDO(Chief Design Officer)であり、当メディアの編集長でもある山崎晴太郎に話を聞いてみた。
山崎晴太郎(株式会社プラゴ CDO / PLUGO DESIGN CENTER所長 / PLUGO JOURNAL編集長)
立教大学卒。京都芸術大学芸術修士。企業・サービスのブランディングを中心に、グラフィック、WEB、空間、プロダクトと多様なチャネルのアートディレクション・デザインワークを手がける。アジアデザイン賞、IFデザイン賞、グッドデザイン賞金賞など国内外の受賞多数。
各種団体主催のデザイン賞審査委員や省庁の有識者会議検討委員を歴任。
FMヨコハマ「文化百貨店(毎週日曜2430-2500)」メインパーソナリティー。東京2020組織委員会スポーツプレゼンテーション・クリエイティブアドバイザー。
山崎「日本の街並みって、どこに行っても必ず電信柱と電線が見えていますよね。これって、電気がインフラとして普及するタイミングでたった一度『高架線でいこう』と決めたことから始まっているんです。
街の景色として馴染んでしまってはいるけど、たとえばロンドンのように電信柱がない街に行くと気がつきます。電信柱がないだけで、街並みってこんなに美しくなるんだ、ということに。
これと同じことがいま、起ころうとしているんです。EVが普及して、いつか100%になったときにどんな街並みが作られるか想像してみてください。駐車場の車室ひとつひとつにEV充電器が並ぶことになります。
これが街の景観に与えるインパクトはとても大きなものになるでしょう。かつて『電気は高架線で送ろう』と決断したのと同じ過ちを犯さないためにも、いま、手を打つ必要があるんです」
PLUGOのコンセプトモデル「PLUGO BLOCK」
山崎「そこで、私たちPLUGO DESIGN CENTERでは、街の景観に馴染み、視覚ノイズを最小限に抑えたEV充電器の開発に取り組んでいます。
たとえばこのように、車止めに充電器の機能を持たせれば景観に何も加えることなく、機能だけを付加できますよね。他にも、設置場所の環境に合わせていくつかのパターンも開発しました」
左から「PLUGO WALL」「PLUGO BAR」「PLUGO BLOCK」。すべてPLUGOのプロダクトだ。
山崎「EVを普及させてクリーンな社会を目指しましょう、という今この社会が目指している方向性は素晴らしいものだと思います。そのためにEV充電器の普及が必要なのも、そのとおり。
でも、クリーンな社会を目指すために景観ノイズを増やしていくというのは、これは違うんじゃないかと思うんです。そこにすごくギャップがある。これを解決するのが、PLUGO DESIGN CENTERの大きな役割です」
DESIGN EVERYTHING AROUND ENERGY
このように、PLUGO DESIGN CENTERではいつか来るべき「EV社会」に向けて街の景観を維持・改善することのできるEV充電器の開発を進めているが、必ずしも問題がそれだけで解決するわけではない。
山崎は「エネルギーを取り巻くすべて」をデザインすることが重要だと言う。
山崎「EVに限らず、僕たちってエネルギーというインフラに頼らず生きていくことはできませんよね。いま僕たちを照らしているこの照明も、目の前にあるPCも、電気で動いています。家に帰ればガスキッチン、バスルーム、もちろん照明も。暮らしの非常に多くの部分をエネルギーに支えられている。でも、エネルギーって、見えにくいものだと思いませんか?
たとえば、僕個人で言うと自宅では100%再生可能エネルギーの電力を使っています。だからといって照明が優しい色になったりするわけではない(笑)。表面的には『ただちょっと高い電気代を払っているだけ』なんです」
環境まで含めた「エネルギーを取り巻くすべて」がPLUGO DESIGN CENTERのデザイン領域。
山崎「でも、実感として何かを得ることができないと本当には普及しません。EVがエコでクリーンなものであることは頭で理解することができる、だからこそ、実際に触れるインターフェース(EV充電器)のプロダクトデザインは重要なんですが、それはあくまでも『点』でしかありません。
充電器という点(プロダクト)から生まれる景観、社会とエネルギーの関係性までを視野に入れたデザインが必要だと思っています」
「EVターミナルパーク構想」パースイメージ
山崎「その考え方を実現するフラグシップとして、いまインドやシンガポールなどいくつかの国で現地の自治体や政府に提案をしている『EVターミナルパーク構想』があります。
現地の文化的背景、自然とのつながり、コミュニティの自律性、そして車社会においても人間性が失われないことなど、9つのコードをPLUGO DESIGN CENTERで定めてデザインしているものです。
具体的には、駐車場は小さく分散させたり地下に隠したりして景観の主導権を『機能』に持たせないようにしつつ、コミュニティスペースの屋根にはソーラーパネルを設置して半自律的にエネルギーを得ることができるようにするなど、車社会に求められる機能とランドスケープデザインを同時に叶えようという考え方ですね」
PLUGO DESIGN CENTERが持つ共創の精神
EV充電器という「点」のプロダクトから、環境、ランドスケープという面までをデザインすることで「続けたくなる未来」を創っているPLUGO DESIGN CENTERは、その理念から共創にも積極的だ。
山崎「いまお話したような考え方を未来に向けて実現していくためには、私たちだけの力ではなく多くの方と手を組んでいくことが必要だと思っています。
日本国内でも、いくつかの自治体の皆さんと一緒に景観に配慮したEV対応のランドスケープを作ろうという挑戦をしていますし、EV充電器を作っているメーカーさんやインフラ企業の方々ともプロダクトデザインの観点で協力させていただいています。
『続けたくなる未来』を一緒に創ろう、考えていこうという方々と、これからも積極的に手を組んで前進していきたいですね」
PLUGO JOURNALでは、新着記事や、EV・旅に関する最新情報をお届けするメールマガジンを配信しています。