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AIがサンゴ礁の「歌」で健康状態を把握する

TECH | 2022.06.30

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AIがサンゴ礁の「歌」で健康状態を把握する

消滅の危機にあるサンゴ礁

サンゴ礁の「歌」を聞いたことはあるだろうか。

「海のオアシス」と呼ばれ、人間にとっては食材の宝庫でもあるサンゴ礁。国連環境計画(UNEP)によると、この地球上で約8億5,000万人もの人々がサンゴ礁のある海岸から100km以内に住んでおり、その生態系からなんらかの経済的利益を得ている。一方、過去の記事でも紹介したように地球温暖化や水質汚染などによりサンゴ礁の25〜50%は既に破壊され、さらに60%が破壊の危機に晒されているという。

そんな危機に瀕しているサンゴ礁の「健康状態」を、サンゴ礁の「歌」から把握しようとする取組みが行われている。

サンゴ礁から聞こえる「歌」

その鍵を握るのはAI(人工知能)。
英エクセター大学の研究者たちは、AIを使ってサンゴ礁の歌を分析することで状態を把握し、サンゴ礁の再生に役立てようとしているのだ。

海洋生物の4分の1はサンゴ礁域に生息しているとも言われるように、サンゴ礁は多様な生物のすみかや産卵場所になっているため、様々な音が聞こえてくる。それがいわゆる「サンゴ礁の歌」であり、サンゴ礁の健康状態を知るための指標になるという。

「見ただけでは分からないかもしれませんが、実はサンゴ礁は『とても騒がしい場所』なのです」と、この研究の立案者のBen Williams氏は言う。
健全なサンゴ礁の繁みの陰からは、焚火のパチパチという音によく似たエビの鳴き声や、さまざまな魚が発する「フーッ、グーン、ノック」といったような、思いもよらない声も聞こえてくる。

一方、劣化したサンゴ礁から聞こえる歌は、とても寂しいものだという。海洋生物の声には、コミュニケーション、摂食、防御などさまざまな意味が含まれているのだが、それがほとんど聞こえてこないそうだ。

「歌」を分析し、サンゴ礁を守るAI

サンゴ礁のサウンドスケープ、つまり「歌」のデータを集めるのはそんなに難しいことではないという。
専門のダイバーが潜る必要はなく、水中にハイドロフォンを入れて数週間から数カ月放置するだけで、簡単に長期的なデータを収集することができる。

ただ、データ分析には多大な時間と労力がかかってしまう。
そこで活用されているのがAIだ。AIは録音データから聞こえてくるサンゴ礁の歌を、より速く正確に数えてくれるのだ。
さらにエクセター大学の研究者たちは、健全なサンゴ礁と劣化したサンゴ礁の録音をAIに聞かせ、それらを区別できるようにトレーニングを行った。訓練を積み重ねた後、このAIに新たな録画データを分析させると、サンゴ礁の健康状態を92%の確率で正しく認識することができたという。

この技術は、環境変化を分析するための重要な指標であり、その影響を顕著に受けているサンゴ礁の保護に貢献することが期待されている。将来的にはこのチームの研究を世界中に広げ、他の再生プロジェクトにも役立てることができると、Williams氏は確信している。


Source :AI can track the health of coral reefs through their ‘song’, but what does it sound like?

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TEXT:
倉若太一 ( Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。企業・利益中心の開発はいかがなものかと疑問を持ち始めました。いつまでもあると思うな親・金・資源。

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