世界の政治・経済・文化の中心、米ニューヨーク。
多くの観光客も訪れるこの場所が、最近「気候変動対策のラボ(研究所)」に生まれ変わったという。
と言っても、ニューヨーク市全体がラボになったわけではない。
「ニューヨークの緑の肺」とも呼ばれる「セントラルパーク」が、ラボとして気候変動対策に役立てられようとしているのだ。
セントラルパークが気候変動対策のラボに
セントラルパークは、843エーカー(3.4㎢)もの広大な都市公園である。
そこに、セントラルパークの運営団体「Central Park Conservancy」と環境保護団体「Natural Areas Conservancy」、そしてイェール大学環境学部が共同し、気候ラボが立ち上げられたという。
このラボでは、気候変動が都市公園に与える影響とそ解決策について研究する。
パーク内の動植物が季節や気候の変化にどのような対応をするのか、地上や人工衛星からのあらゆるデータを収集・分析するのだ。公園や気候変動に関する個々の研究は多数あるものの、セントラルパークを「生態系」として研究しようとするものである。
「例えば、公園はどれだけ二酸化炭素を吸収しているのか。公園を訪れる人たちや、公園周辺の住民にどれだけ涼しさを提供しているのか。私たちは、気候変動に対し、公園がどのように解決策の一部となり得るかを調査したいのです」と、イェール大学環境学部の教授Karen Seto氏は言う。
気候変動対策に、都市公園が果たす役割
例えば2021年9月には、ハリケーン・アイダにより広範囲が浸水するなど、この10年間、セントラルパークは大雨、吹雪、強風、猛暑や極寒など、数々の異常気象に見舞われてきた。
都市公園は、都市とそこに住む人々の健康にとって不可欠なものだが、気候変動に対して脆弱でもある。
そして、その公園を管理・保護するための情報や政策的なアドバイスを得られる情報源がないことが課題であった。
この気候ラボは気候変動と戦うためのより良い策を考察するための研究拠点であり、今後、全米の都市公園にも拡大されるという。研究が進むことで、都市公園はますます重要な役割を担うことになるだろう。
「現在、世界人口の約55%が都市部に住んでいます。気候変動の影響をどのように管理し、緩和していくか。その解決策に、都市公園が果たす役割はますます重要になるでしょう。私たちは、都市公園が猛暑を緩和したり空気をきれいにしたりし続けられるように、公園を保護し、気候変動対策に反映させたいと考えています」と、Seto氏は述べる。
また、ニューヨーク市長のEric Adams氏も声明の中でこう述べている。
「公園はニューヨーカーにとって不可欠なものですが、洪水、強風、異常気温はその健康を脅かすものです。新時代を切り開くセントラルパーク気候ラボは、気候変動対策のためのより良い情報を提供し、全米の都市公園のモデルとなることでしょう」。
Source :Central Park is being turned into a scientific lab to study climate change