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少しずつ日が長くなり、夏を感じる季節が到来。もうすぐ夏本番だ。
沖縄では早くも3月から海開きが始まり、本州でも6月から多くの場所で海開きが行われるという。
そんな夏の定番、海水浴だが、夏の海で多くの人が使う「あるもの」が環境に大きなダメージを与えていることはご存知だろうか。
サンゴ礁を白化させてしまう、日焼け止め
「あるもの」とはそう、日焼け止め。
紫外線から肌を守り、日焼けや皮膚がんを防ぐための必須アイテムだが、一般的に販売されている日焼け止めには、いわゆる紫外線吸収剤と呼ばれるオキシベンゾンやオクチノキサートなどの成分が含まれており、これらの化学物質がサンゴ礁の白化現象を引き起こし、海洋環境を悪化させているという。
「海のオアシス」とも呼ばれるサンゴ礁はただ美しいだけではなく、海洋生物の4分の1はサンゴ礁域に生息しているとも言われるように、生物たちの大切なすみかであり、産卵場所である。
また、海水の二酸化炭素濃度の調節も行うなど、自然の防波堤として重要な役割を担っているが、近年は地球温暖化や水質汚染により、サンゴ礁の白化現象が世界各地のリゾート地で問題になっている。
毎年約4,000〜6,000トンもの日焼け止めがサンゴ礁に流入してきているというのだ。
日焼け止めの化学物質が海に流出することでサンゴ礁にストレスがかかると、サンゴに共生している褐虫藻(植物性プランクトン)が追い出されてしまう。そして、褐虫藻から栄養を得ていたサンゴ礁はエネルギー不足となり、白化を引き起こし、やがては死滅してしまうという。
サンゴ礁が減少すると生態系のバランスが崩れるだけでなく、海水中の二酸化炭素吸収力が弱まる。その結果、大気中の二酸化炭素濃度が増え、地球温暖化のさらなる加速にも繋がってしまうのだ。
さらに最近の研究では、日焼け止めが影響を与えているのはサンゴ礁だけではないことが明らかになった。
日焼け止めの影響は、海藻にも
サンゴ礁の白化の原因となっている化学物質が、地中海の「海藻」にも蓄積しているという。
地中海に浮かぶマヨルカ島は「地中海の宝石」とも呼ばれるほど美しい島で人気のリゾート地だが、ここに生息する地中海固有の海藻、ポシドニア・オセアニカの茎からも、日焼け止めに含まれる化学物質が検出されたという論文が発表されたのだ。
ポシドニア・オセアニカが形成する草地には多くの海洋生物が生息し、地中海の生態系を維持する極めて重要な役割を担っている。
さらに「海藻が世界を救う?スーパーフードからスーパーヒーローに」でも紹介したように、海藻は気候変動との戦いにおいて、炭素の貯蔵を行う点からも必要不可欠な存在であることは疑いの余地がないだろう。
現時点では、この化学物質の蓄積による具体的な影響は明らかになっていないが、海藻の光合成能力が低下し死滅してしまう可能性のあることが懸念されている。
「日焼け止めが海藻の光合成や生産性に悪影響を与えることが分かれば、深刻な問題になるでしょう。海水浴客と海藻を守るために、より良い規制と代替品を提供すべきです」と、論文の共著者Nona Agawin教授は述べている。
肌だけでなく、海にも優しい選択を
米フロリダやハワイ、パラオをはじめとする世界のリゾート地では、既にこれらの化学物質を含む日焼け止めの販売を中止、または使用を禁止している。
美しい海を楽しむために日焼け止めを使い、それが原因で海が汚れ、海洋生物たちを傷つけていることはとても残念なことではないだろうか。自身の肌だけでなく、海にも優しい日焼け止めを選ぶことで海洋環境を守りたいものだ。
Source :Sunscreen That Damages Reefs May Also Threaten Seagrass, Study Finds