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「未来の農家」が実現する、環境に優しい農業

FOOD | 2022.05.18

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「未来の農家」が実現する、環境に優しい農業

地球温暖化の原因にもなっている農業

私たちの生活を支える農業が、環境問題の原因にもなっていることをご存知だろうか。

例えば、世界の淡水消費量の約70%が農業に使用されており、農業が関与する温室効果ガス排出量は人為的な排出量の約3分の1をも占める。

しかし近年、農業を取り巻くもの (形態・農家・技術) も以前とは異なる「新しい姿」を見せており、環境に優しくなっているという。

ロボット工学とAIを適用した水耕栽培

ひとつの例が、シリコンバレーに拠点を置く農業技術のスタートアップ企業、アイアン・オックス (Iron Ox) だ。彼らが栽培を行う「温室」は、これまでカリフォルニア州ギルロイにしかなかったが、2022年4月にテキサス州ロックハートにグランドオープンした。

同社は、農業の持続可能性と効率向上のため、ロボット工学とAIを水耕栽培に適用している。
水耕栽培とは、土を使わずに水と液体肥料を使った農法のことで、水が根から直接吸収されるという利点がある。従来の畑作では多くの淡水が使用されながらも、その多くは流れてしまい実際に植物に届くのはわずか10%だというが、水耕栽培では効率良く吸収されるため、水の使用量を90%も削減できるそうだ。

ただ、その農法は「垂直農法」とは異なる。
垂直農法とは、より小さな空間で栽培することで温室効果ガス排出量を抑制することを目的とした別のタイプの技術で、自然光と人工光を組み合わせている場合が多い。一方でアイアン・オックスの水耕栽培では、温室全体に自然光が差し込むため、人工光を必要としないという点で大きな違いがある。

自立型ロボットが「未来の農家」に

また、アイアン・オックスの温室では「未来の農家」が働いている。それは、自立型ロボットのグローバー (Grover)とフィル (Phil)。

グローバーは、温室自動化システムにおいて、非常に重要なバックボーン(通信網の中枢)だ。温室中を自律的に見回り、日光・栄養・水は十分か、収穫可能かなどを判断し、必要な場所に植物栽培モジュールを移動させる。

一方でフィルは、各モジュールの水・栄養・pHレベルを正確かつ継続的に監視し、迅速に供給するように設計されている。グローバーと連携し非接触で動作するため、迅速かつ効率的な作業が実現している。
それだけではなく、植物科学者が何千ものモジュールからデータ収集・分析するために重要な役割を果たしており、作物の収量と質の最適化・成長サイクルの拡大化を可能にしている。

彼らのおかげで、環境への影響を大幅に下げながら、おいしくて栄養価の高い地元産の果物や野菜を栽培できるという。

この「環境に優しい農法」が評価され、ビル・ゲイツ氏らが出資する20億ドル (約2,580億円) 規模のファンド「Breakthrough Energy Ventures (BEV)」から出資を受けた。BEVは、加速する気候変動の影響を緩和する取り組みを行う企業へ投資を行うファンドだ。

気候に左右されず、消費者と近い距離で

そしてアイアン・オックスの農業の大きな特徴は、やはり屋内で栽培していることだ。そのメリットは大きく2つある。

1つ目は、気候や気候変動にも左右されず、いつでもどんな作物でも栽培できることだ。これは地球温暖化が農業に与える影響を緩和できる。

2つ目は、消費者と距離を縮められることである。ロックハートからほど近いヒューストン・オースティン・ダラスの市場で販売できるため、移動にかかる温室効果ガスを削減できるのだ。さらに、収穫から約1日以内に近くの小売店に配送するため、最適な鮮度と味が保証されるという。

屋内農業の未来とは

農業の持続可能性と効率の向上を図るアイアン・オックス。同社は今後18ヶ月で栽培品種を増やしながら、現在の約100倍の農産物を生産する予定だ。

彼らのように自然光で水耕栽培する屋内農業はまだ珍しい。しかし、この「環境に優しく、新鮮な農産物を届けられる農業」は今後さらに求められていくだろう。


Source :How robots and indoor farming can help save water and grow crops year round, Iron Ox Farm Optimizes Indoor Farming With AI and Robots, Technology – Iron Ox

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TEXT:
庄司友里 ( Twitter / note )

フリーライター。宮城大学食産業学部フードビジネス学科卒。「食」が関係するすべてのものに興味があります。

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