PLUGO JOURNAL

NEWS

風力発電の新しい選択肢-空中を浮遊して風を集める帆

ENERGY | 2022.05.10

SHARE

風力発電の新しい選択肢-空中を浮遊して風を集める帆

風力発電の難しさ

近年世界各国で、再生可能エネルギーへの移行が加速している。

その方法の1つが風力発電だが、通常、風力発電には広大な土地が必要だ。
1MWを生み出すためには東京ドーム6個分以上の面積を要するとも言われており、そのような土地には限りがある。
また、風の向きや量は天候次第なので、エネルギーの安定供給が得られないことも課題になっている。

そんな中、これらの問題を解決する新しい風力発電が注目を集めているという。

大きな帆が風を受け止めて電力を作りだす

インド洋に浮かぶ美しい島国、モーリシャス。そこで目にするのは、青い空にふわふわと浮かぶ帆の数々だ。一見パラグライダーのキャノピー(布製の翼の部分)にそっくりだが、やたらと大きい。

それもそのはず、この浮遊する帆たちは大きな面積で風を受け止めて、風力発電しているのだ。

ドイツのSkySails Power社が開発したこのシステムは「Airborne Wind Energy(浮遊する風力発電)」と呼ばれていて、その名のとおり、空を漂う大きな帆たちが電力を作り出している。
帆は風をたっぷりと受け、平均時速約100kmで空中に浮かんでいるという。

帆は上空200~400mほどまで上げられているが、さらに高く800mほどの位置まで上げることも可能。高い位置では強風が吹いており、より効率的に風を集められるのだ。

もし上空の風が突然止んでしまっても、帆につながった地上の巻き上げ機がすぐにロープを巻き上げて、帆が落ちないように新たなゆらぎを発生させる。これにより、帆はずっと浮遊して風を集め続けられるという。

SkySails Power社の発表によると、この2ヶ月間で、目標の100kW(一般家庭約50世帯分の電力に相当)程度の発電量を供給してきたそうだ。これは島の電力需要のほんの一部に過ぎないが、同社はこれを将来の兆しとして期待している。

土地がなければ「空中」を活用するというアイディア

世界がネット・ゼロ・エミッションに向かう中、将来の電力生産において風力が大きな役割を果たすことが予想されている。
国際エネルギー機関では、風力発電は2050年までに今の11倍にも増加し、地球上の電力需要の7割程が風力と太陽光に頼ることになると見込んでいる。

再生可能エネルギーを生み出すための十分な土地がないのなら「空中」を活用しようという考えから生まれたAirborne Wind Energy。
課題は見方を変えると新しいアイディアが生まれることを、私たちに教えているのかもしれない。


SOURCE: The kites seeking the world’s surest winds

SHARE

TEXT:
俵谷千尋 ( facebook / Twitter / Instagram )

PLUGO JOURNALニュースライター。いろいろな国の文化の違いや食事など知ることが大好きです。海外渡航歴27ヵ国。人生で100ヵ国達成が目標です!

recommend

RECOMMEND