Amazonの発表によると、Alexa対応デバイスに「Alexa, grow a tree(アレクサ、木を植えて)」と伝えることで、1本の木を植えるための1ドルを寄付できるようになった。
この1ドルで、世界中の森林再生を支援する環境チャリティ団体「One Tree Planted」を介して1本の木が植えられるという。これはアメリカのユーザーを対象とした取組みで、Amazon Payのアカウントに自分が植えた木の本数を記録することもできる。
さらに同社は「One Tree Planted」に100万ドル(約1.2億円)を寄付することも発表。
一見すると環境に優しい取組みだ。しかし、Amazonが環境に優しい企業だという印象を持つのは早計かもしれない。
100万ドルの寄付金は、100万本の植樹に役立てられる
今回の寄付金はまず、アメリカとインドの4つのプロジェクトに使われる予定だ。
アメリカペンシルバニア州では、鉱山の採掘や農業のために伐採され、荒らされた土地の再植林に役立てられる。カリフォルニア州では近年問題になっている山火事を防ぐために、植生計画の改善と資源管理の推進を行う予定だ。
また、アメリカ太平洋岸の北西部では川の近くに植樹することでシャチの餌となるサケの産卵場の水をきれいに保つことができ、インドでは、果樹を植えることで飢餓に困窮した人々を助け、地域経済の向上、気候変動の抑止にも繋がるとされている。
実は難易度が高い植樹事業
世界を変えてくれそうな計画だが、これらの取組みは大海の一滴に過ぎない。
1ドルの寄付で1本の木が植えられるところまでは確かだ。しかし、残念なことにその木が山の緑化、サケの生息地の浄化、地域社会の食料調達など、期待する役割を果たすために十分長く生き残る保証はない。
植樹活動を長期的に成功させるためには、例えば、植樹する環境に適した木を選んで植えて育て、長きにわたって地域社会の人々の賛同を得るなど、多くの工夫が必要だ。
この種のキャンペーンは、自然環境とそれに依存する人々に、より大きなダメージを与える危険性すらある。
昨年発表されたある研究では、インドで行われた植樹プロジェクトの多くは森林を大きくすることができなかったと報告されている。それどころか、地域住民が活用していた樹種から森林の構成を別のものへと大きく変えてしまったという。
専門家は、植樹活動は人気があるものの、環境を守るためにより急ぐべき行動、つまり「環境破壊そのものを削減すべき」という視点から目をそらさせる可能性があると警鐘を鳴らす。
Amazonが地球につける足あと
Amazonのエコロジカル・フットプリント(人間活動により消費される資源量の評価)は、ビジネスの拡大とともに増加している。最新のサステナビリティレポートによると、同社の2020年の温室効果ガス排出量は前年比20%近く増加している。
Alexaを通して木を植える取組みは非常に魅力的に見える。しかし、Amazonの事業活動が環境へ与える影響から目をそらしてはいけない。
Source :You can now tell Alexa to plant a tree