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古代マヤ文明の建築様式を取り入れた駅
メキシコでは現在、全長約1,525kmにも及ぶ「Tren Maya(マヤ観光鉄道)」が建設されている。
これは、カリブ海に面した有名なリゾート地カンクンを終点に、ユカタン半島に点在するマヤ遺跡を結ぶ観光路線になるそうだ。
その路線の中に、一際目を引くデザインの駅が建設されているという。
なんでも古代マヤ文明の建築様式にインスピレーションを受けたものなのだとか。
太陽光が降りそそぎ海風が通り抜ける、サステナブルな格子状の屋根
Sustainable, low carbon footprint train station being built using Mayan building methods. https://t.co/Kfl2xeiWMS
— GMTMA (@gmtma) July 9, 2021
上から見下ろすと目玉のように見える形状のこの駅は、マヤ文明の城壁都市で知られる「トゥムル遺跡」の近くに建設中の「トゥムル駅」。
設計を担当した建設事務所Aidia Studioによると、開拓面積を最小限にしつつ高い利便性も考慮したのだそうだ。そして遺跡のあるこの地に馴染むフォルムとサステナビリティを追求した結果、このデザインになったという。
駅舎の中に一歩足を踏み入れると、伝統的なマヤの幾何学模様を連想させる格子状の屋根が見える。
この格子の必要な部分だけにガラスをはめ込み必要以上に密閉しないことで、雨は防ぎつつも十分な太陽光を取り入れ、海風が通り抜けるようになっているという。そのため空調による換気は必要なく、自然の力で換気できる空間となっているのだ。
利用者は、駅構内にいながら太陽光や海風を感じることができ、さらには駅舎周辺の美しい自然環境との一体感も感じることができるという。
「ユカタン半島の気候は熱帯性で、夏は雨が多く湿度も高い。この極端な気候に対応するために、私たちは格子状の屋根に工夫をすることで、機械による換気を必要としない半開放的なスペースを実現しようとしています」と、Aidia Studioの創設者Rolando Rodriguez-Leal氏は語っている。
風が通り抜けることで、気候変動にも対応
このなめらかな曲線を描く格子状の屋根は、ハリケーンへの耐性も抜群だという。
ここトゥルムにおいても、近年は気候変動の影響でハリケーンの発生が増えているが、この風が通り抜けやすいデザインは、強風への抵抗が非常に少なく、駅舎のダメージを最小限に抑えることができるそうだ。
さらに塗装には、伝統的なマヤの木であるチュクムの樹脂を使用。この樹脂と石灰石の細かい砂を混ぜ合わせ、防水性の高い塗装が施されているという。
利用者の「体験」にも大きな付加価値を
またこの駅舎は、ただサステナブルなだけではない。
駅を利用する人々の「体験」にも大きな付加価値を与えている。
屋根から太陽光が差し込むと、利用者は壁や床に映し出される美しい幾何学模様の影を楽しむことができるのだ。これはマヤ文明の「影と戯れることを楽しむ」という要素を取り入れたもの。
また、建築素材にもこだわり、熱帯材を使用することで空間に暖かさと質感を加えているという。
「光、影、素材、質感、植物から詩的な体験ができるような要素を散りばめました。屋根から太陽光が差し込むと、光と影の戯れが構内全体を巡り、利用者にさまざまな感覚を呼び起こすでしょう」と、Rolando Rodriguez-Leal氏は述べている。
同駅の完成予定は2023年末。
古代マヤ文明の知恵と現代技術の融合が生み出すサステナブルな駅を楽しみにしたい。
Source :Stunning Train Station Being Built in Mexico Uses Mayan Design to Bring Sea Air in and Keep Rain Out