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アートの世界でも広がる「サステナブル」
様々な業界で進んでいるサステナブルだが、アートの世界にも広がっているのをご存知だろうか。
2021年7月には、地中海・キプロス島のアヤ・ナパ沖合にとてもユニークな美術館がオープンしたという。
美術館では、感性が刺激されたり、時代を反映した作品に当時の社会や思想を感じられたりと学ぶことも多いものだが、「サステナブル」について学べるこちらの美術館では「シュノーケル」が必須アイテムだという。
一体どのようなものなのだろうか。
海底に広がる彫刻美術館「MUSAN」
「アヤ・ナパ海底彫刻美術館(Museum of Underwater Sculpture Ayia Napa:MUSAN)」と名付けられたこの美術館は、なんと海底にあるのだ。
人間と自然の関係をコンセプトに作られた「MUSAN」は、彫刻家であり、環境保護活動家、写真家としても活動するJason deCaires Taylor氏が手掛けたもの。
この海域は透明度が高く、ダイバーやシュノーケラーが水中ギャラリーを訪れるのに適しているそうだ。
水深8〜10mの広い「館内」には、人や植物を模した93個もの彫刻作品が展示されていて、それらは私たちが直面している気候危機や珊瑚の生息地の喪失、環境・海洋汚染など、さまざまな物語を表現しているという。
例えばこちらの作品、何をテーマにしたものか分かるだろうか。
この彫刻は複数の子どもたちが互いにカメラを向け合うように配置されているのだが、この美術館の最も重要なテーマのひとつ「情報の力」や「変化を生み出す力」を表現しているのだという。
人工漁礁としての役割も持つ「MUSAN」
MUSANは、ただ社会問題を表現したアート作品、というわけではない。
実は、この地域の海洋生物の繁栄を目的とした「自然再生プロジェクト」の一つとしての役割も担っているのだ。
秘密は、その素材。
彫刻はpH(水素イオン指数)中性のセメントで作られ、表面は珊瑚や海綿などの微細な生物が付着し、成長できるように工夫されている。
そのため、周囲の環境に悪影響を与えないだけでなく、失われた珊瑚礁の回復を手助けすることができ、他のさまざまな海洋生物の住処や食料源にもなり得るという。
多様な生物が生息する場所として、どんどん進化していく彫刻なのだ。
「これらの彫刻は芸術作品であると同時に『人工魚礁』としての役割もあるので『2つの目的』を果たすことができる。いずれは海の生き物や珊瑚、水生植物が作品を完成させるだろう。訪れた人が希望を持ち、人間の影響が必ずしも悪いものばかりではないということを感じてもらいたい。我々がしてきたことのいくつかは覆すことができるはずだ」と、Jason氏。
漁業海洋調査局のGiorgos Bayadas氏は「この美術館が多くの人々を魅了し、海洋環境の保護に対する人々の意識を変えていくことを期待しています」と述べている。
Source :The underwater museum fighting to rewild Cyprus’ seabeds