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地球温暖化による海面水位上昇の影響
海面水位の上昇は、地球温暖化によって引き起こされる深刻な問題の1つである。
IPCCの報告では1901年から2018年の間に世界平均海面水位が15~25cm上昇したことが示され、「21世紀の間、世界全体で大気・海洋は昇温し続け、世界平均海面水位は上昇を続ける可能性が高い」ことが報告されている。
それに伴う高潮・高波など沿岸災害の甚大化も予測されており、対策は急務である。
そんな中、この深刻な問題にユニークな方法で挑んでいるコミュニティがオランダにあるという。
水に浮かぶ居住区「Schoonschip」
運河が網の目のように走り、水の都として知られるオランダ・アムステルダム。
そんなアムステルダム北部の運河に新たに作られた「Schoonschip(スホーンスヒップ)」と呼ばれる水上居住区が今、世界中から注目されている。
かねてよりオランダで住居として活用されてきたハウスボートとは異なり、一見ごく普通の「一戸建て」が運河に浮いている様子は、まるで絵本の中の世界のようだ。ここに46世帯・約100名が実際に暮らしているという。
この水上住宅の大きなメリットは、浸水の心配がないということ。
沿岸災害の甚大化が懸念される中、敢えて水のそばに居住区を設けるのは意外に思われるかもしれない。
しかし、軽くて体積の大きい住宅にすることで浮力が働き、地下部分の重りでバランスをとることにより安定した状態を保つことができるのだそうだ。
増水時には家も上昇し、減水時には家も下降。水面に合わせて上下自在に動き、床より上に水が上がってくることはないという。
水に抗うのではなく委ね、むしろ活用しているのだ。
2年前にここに住み始めた人は「水上に建物を建てることが世界的に優先されていないのが不思議なくらいです」と話す。
「Schoonschip」のサステナブルな暮らし
Schoonschipは、ただ海面水位の上昇に適応した水上住宅というだけではない。
例えば、各住宅の建材にはFSC品質の木材やバイオ由来の断熱材を使用。屋根は緑化され、ソーラーパネルも取り付けている。電力は主に太陽光発電で賄い、余った電力は住民同士で売買し合ったり、国の送電網に送ったりしているそうだ。
また、温水を利用したセントラルヒーティングという暖房システムを導入し、温水の熱源には運河の熱を利用。シャワーの水は循環させフィルターを通して再利用している。
さらにコミュニティで食品を共同購入したり、EVや自転車のシェアリングも行っている。
Schoonschipは「クリーンな船」という意味だが、まさにその名の通り。
住人たちは互いに協力しながらエネルギーを地産地消し、環境負荷を最低限に抑えつつ、サステナブルな暮らしを送っているのだ。
世界中に拡がる水上住宅
驚くのは、このSchoonschipは、住人たちが自らアイディアを出し合い作り上げた居住区であるということ。
そしてさらに、この居住区の実現までの過程や、実装されている技術やノウハウなどが「GREENPRINT」というホームページで積極的に開示されているのだ。
世界中がこの居住区に注目しており、今では、他のヨーロッパ諸国やモルディブ等の島国にも同様の取組みが拡がっている。
どんな沿岸地域にも建設可能で気候変動による海面上昇や洪水にも対応することができる水上住宅は、気候変動の時代における居住地の一つのモデルになるだろう。
SOURCE: Why the Dutch embrace floating homes – BBC Future