「コンクリートに代わり木材で建てる高層ビル、プライスクレーパー」でも紹介したように、建築業界においては鉄筋コンクリートの二酸化炭素排出量の多さが課題となっている。
脱炭素社会に向け鉄やコンクリートに代わる新建材として、最先端のハイブリッド木材「Mass Timber」にも注目が集まっているが、もっと豊富で気軽に使うことができ、環境負荷の少ない建材はないだろうか。
そこで1つのヒントになりそうなのが、300年以上もの間、その姿を保ったままフロリダ州の海岸に建っている「海辺の城」だ。
A castle made of sand? Coquina, to be accurate — a natural concrete derived from the ocean. Get to know coquina and its close cousin, tabby.https://t.co/Zlm3MTcOt3 #OceanFactFriday pic.twitter.com/b5nhW65WrS
— NOAA's Ocean Service (@noaaocean) July 12, 2019
「小さな貝」で作られた海辺の城
それは、米フロリダ州Matanzas湾の西岸にあるSan Marcos城。
1695年頃に作られた、アメリカ大陸最大かつ最古の石造りの城砦である。
この城砦は大部分がcoquina(コキーナ、スペイン語で「小さな貝」の意)と呼ばれる石材で作られている。
coquinaは、貝殻の破片が炭酸カルシウムの働きによって砂などと接着してできた頑丈な石灰岩だ。フロリダ沿岸で簡単に採取できる上、軽量なため扱いやすいという。また、その無数の色は美しく落ち着いた城の色調に反映されている。
さらに驚くべきはその耐久性だ。
その頑丈さは、打ち込まれた砲弾が壁にめり込んでも壊れなかったという逸話が残るほど。coquinaが持つたくさんの微細な空気孔が衝撃を吸収するためだという。
貝殻や砂などから作られていると聞くと脆くてすぐに壊れてしまいそうな印象だが、San Marcos城が300年以上も維持されている理由はここにある。
ただ美しく扱いやすいだけでなく、耐久性にも優れたcoquinaは、二酸化炭素を排出することのない「天然のコンクリート」と言って良いだろう。
また、coquinaに関連する建材として「tabby」と呼ばれるものがあるが、これは人工的に作られたcoquinaである。tabbyは、焼いた牡蠣の殻の石灰を砂、水、灰、その他の貝殻と混ぜて作られる。1600年代には、スペインやイギリスの入植者たちが、カロライナ、ジョージア、フロリダ各州の沿岸部で、家屋や建造物の建設、道路の舗装に使っていたという。
現在でも多くのcoquina建築、tabby建築が残されており、これらの歴史的建造物は、初期のアメリカにおける創意工夫と、海からの計り知れない恵みを証明していると言えるだろう。これは、何百年も持続可能な海からの贈り物なのだ。
貝殻や砂のイメージをも覆すこの建材が現代に再び注目され、より多様で持続可能な建材の開発に繋がることに期待したい。
SOURCE: What are coquina and tabby?