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海藻からインスピレーションを受けた、揺れを利用する発電機
ENERGY | 2022.02.02
当メディアでもお馴染みとなっている「海藻」。
「12週間でミミズの餌にまで分解される「藻」から作られた服」や、「海藻が世界を救う?スーパーフードからスーパーヒーローに」で紹介したように世界中の研究者が海藻の持つポテンシャルに注目しているが、今回は、海藻の「揺れ」にヒントを得たという発電システムを紹介しよう。
その名は、「S-TENG(Seaweed-like Triboelectric Nanogenerator)」。
These Seaweed-Inspired Generators Create Underwater Wave Power#GoodNews #GNN #RenewableEnergy https://t.co/UrUWQbHpM6
— Good News Network (@goodnewsnetwork) January 20, 2022
S-TENGは波の力を利用して再生可能エネルギーを生成する波力発電システムだが、注目すべきは、水中でも発電できるという点である。
米ジョージア工科大学の教授Zhong Lin Wang氏らは水中でも発電可能なデバイスを作るために、まず「triboelectric nanogenerator(TENG)」に着目。
TENGは10年程前にWang氏らによって開発された技術で、「歩くエネルギーを電気に変えるサステナブルバックパック」や「紙から作られる自己発電型ワイヤレスキーボード」でも紹介しているように、人の動き、振動、風や波のエネルギーなどを電気に変えることができる小規模な発電システムである。
今回はそのTENGと、海底で揺れる海藻の動きにヒントを得て「S-TENG」を開発したのだという。
S-TENGは、最も一般的なプラスチックの1つであるPETフィルムと、FEPフィルムを導電性インクでコーティングし、その2枚のフィルムで薄いスポンジを挟むことで空気層を設け、テープで密閉して作られている。
そのS-TENGが波によって前後に揺られ、摩擦を繰り返すことで発電する仕組みになっているそうだ。最近の論文では、数個のS-TENGで30個のLEDライトを点灯させることができたと発表されている。
まるで海藻のように、柔軟に揺れるS-TENG。熱や光、音も出さないため、海洋環境への影響はほとんどなく、S-TENG自体が揺れることで海水による腐食も少ないと考えられている。つまり、S-TENGは持続可能な水中波力発電機なのだ。
現在、漁業、水産業においては、海流や潮汐、水質など海の状態のデータをIoTシステムによって収集し、効率的な漁獲に活かすことが求められているが、定期的なバッテリー交換が必要なシステムは時間とコストがかかり、風力や太陽光発電からの電力供給は水中での利用には適さないと考えられている。
S-TENGはまだ実験段階の技術ではあるが、IoTシステムへの効率的な給電が可能となるかもしれない。低コストでバッテリーに依存しない持続可能な海洋IoTの実現に向けて、その活用が期待されている。
日本に馴染み深い海藻がますます活躍していくのを楽しみにしたい。
Source :These Seaweed-Inspired Generators Create Underwater Wave Power